深山の春の幸

田植えを終えての午後、合居川渓谷へ入ってみました。

まだ国有林内の林道には一箇所厚い雪崩の塊があり車両は通行止めです。積雪がそれほど多くなかったのにこういうかたちでこの季節まで多くの雪が残るのはめずらしいこと。雪崩の大きさは降雪の多少にあまり関係ないことをあらためて教えられたところです。

雪解けの遅い雪崩跡の斜面は、里山ではすでに過ぎた春一番の山菜がいま真っ盛り。ウド、アエコ、アザミの茎、そしてシュデコ(シオデやタチシオデ)とならんで「山のアスパラガス」と私たちが呼ぶナルコユリでしょうかそれともアマドコロでしょうか、みんな食べ頃です。

雪崩跡は、村人が好んで食すサグ(エゾニュウの仲間)の中心茎もちょうど採り頃です。クマも相変わらずサグの山から離れずに日々を過ごしているようで、茎を食べた跡が斜面一帯に見られました。仙北市方面のタケノコ山に入った60歳代の女性が、クマに襲われたとみられるいたましい事故が報道されました。タケノコもサグもクマにとってこの季節は主食のようなもの。山菜採りは「常にクマがそこにいる」という警戒が欠かせません。

ところで、この季節には春のキノコたちとも出会えます。雪崩に運ばれ横たわっていたミズナラ大木の枯れ木には天然のシイタケが、同じくイタヤカエデの枯れ木にはヒラタケが顔を出していました。2つとも味噌汁で深い味と香りを楽しみました。

雪崩が落ちる谷は堅い雪の帯ができています。ブナの森には、春を告げるエゾハルゼミの鳴き声がいっぱい響きます。この鳴き声が聞こえるようになると深山のタケノコ採りもいよいよはじまりです。

田植えを終えて

お天気もなんとかもちこたえた26日、予定通り田植えを始め、翌日には終えました。


 

 

こちらのたんぼは河岸段丘にあって土手が高く、大きな機械だと上がり下がりにもそうとう気をつけないと不安定で危険です。そういうことから、以前には施肥もできる6条の田植え機械を使っていましたが、今はもっとも小型の田植え機にきりかえました。我が家の段々たんぼで動く機械は、「大は小を兼ねる」は通用せず、小こそが能率良しと考えたからです。でも、最近の田植え機械は大きくても軽くコンパクトにできているようで、そういう機械を高スピードであやつる方々を見ると「すごいなあ」と思ってしまいます。


 

 

 

農家といっても稲づくりだけが主な農家では、むかしと違ってこの後のあの難儀な草取り作業がなしです。田植えが終われば穫り入れの秋までに集中した作業は畦の草刈りぐらいですから、まずは気持ちがホッと一落ち着きです。むかしは機械もなくみんな手植え、田植えを終えた往時の人々が「ヨデ」というお祝いの宴を家々で催した気持ちがなんとなく理解できます。

今年も、フジ、レンゲツツジ、ヤマツツジの花を愛でながらの田植えです。作業を終えては、転作田約25㌃に作付けしているワラビを「親戚に送ろう」と妻が手折っていました。

早苗でやっと緑となり水に満ちたたんぼ。一仕事を終えた私も安堵と喜びに浸りましたが、たんぼに生きるカエルやイモリやタニシたちも喜びは同じとみえます。一年ぶりに張られる水を待っていたのでしょう、大きな池のような水のおかげでかれらの行動範囲はぐんと広がりました。

 

 

ツバメの水浴び?

今日は、先にカメラにおさめていた2つの場面を載せておきます。

ひとつは、ツキノワグマが、大好物のサグ(エゾニュウ)を食べた跡。山菜としてその中心茎がよく利用されるサグは今が採り頃でしょうか。その茎はどうしたわけかクマもタケノコとならんで春の主食のようにしてよく食します。

タケノコ山と同じで、サグのある春の山もクマと行き会わせることが多いですから用心が必要です。

もうひとつカメラにおさめていたのは、須川高原温泉や栗駒山荘の軒先に巣をつくるツバメたちが、駐車場の水たまりで水浴びのような戯れに見えるうごきをしていた場面です。

高原ではよくみられるごく普通の光景でしょうが、ツバメが群れでこんな仕草をしているのを見たのは私ははじめてだったので記録しておきました。

代掻きを終えて

村の今週末は田植えが集中するとみられ、代掻きが真っ最中です。我が家も、おととい午後からきのう午前にかけて代掻きを終えました。

早朝4時半頃から作業開始しましたが、勤めをもちながらの稲作りの方々など、もうこちらより早く4時頃には作業にとりかかっている方もおりました。当方の体験からして兼業農家の代掻き・田植えの季節は、職務の遂行とともに職場のみなさんにももっとも気をつかう時期でした。おそらく、勤め現役のみなさんも、そうした事情をかかえながら早朝、夕刻などの作業に精を出しているのでしょう。

たんぼ脇にはレンゲツツジとフジの花が真っ盛り。畑のそば、たんぼ脇、家のまわりは山菜の笹竹(ネマガリタケ)やミズ(ウワバミソウ)、ウルイ、アザミなども食べ頃となり、栽培のワラビもいっせいに盛りの季節となりました。

これからしばらくは、村の家々の食卓に旬の山菜が切れ目なくならぶでしょう。今年は林道の雪消えがやや遅れていると思われますが、ガザ(タニウツギ)の花も咲き始めましたから、6月に入れば国道沿いなど深山のネマガリタケノコ採りもいよいよシーズン入りです。

4つの同盟会総会

きのうは湯沢市雄勝郡にかかわる道路関係4つの同盟会総会で湯沢市へ。県南高規格幹線道路、国道398号、国道108号、西栗駒広域縦断道(村内では県道仁郷大湯線、小安温泉椿川線の県道2路線)がその該当道路です。いずれも建設促進や整備促進を目的とする同盟会で、朝の9時半から昼12時15分頃まで、構成員を次々と換えながら、会長挨拶、来賓挨拶、来賓紹介、議事、事業概要説明が当然ながら同盟会ひとつひとつごと、ていねいにおこなわれました。

遠路、由利本荘市や宮城・大崎市からの出席もありますから会議の開始時間に配慮は必要でしょうが、「もう30分早く始められたら」の声が会議終了後に出席者から出されていました。私も単純にその声にうなずきました。

月末の上京日程をにらみながら田植えを予定していて、きのうは会議後、我が家でもいよいよ代掻きにはいりました。先日のダム総会の際、大仙市方面の方から「雨が降らず、水が少なくて、代掻き出来ない」という声がきかれました。夏日、真夏日のようなお天気続きで「春でも、水が不足」という地区がごく一部でしょうがあったことを知りました。

それに比べれば、わが村など、農業用水にも、水道水にもまことによく恵まれているもの。「適度な雨よ早くこい」と願う人々への共感とともに、水の豊かな村の幸せ、ありがたさをあらためて思ったところです。

須川高原のミズバショウなどを載せたおとといの写真、別のカメラで写したほぼ同じ場面を載せてみました。今度は、ちょっと暗すぎたかもしれませんが、「元気の素」の若葉の高原とミズバショウの再録です。


 

 


 

 


 

 

 

 

 


 

 


 

 

 


 

 


 

 


心と体を癒やしに若葉の須川高原においでを

きのうは成瀬ダム建設促進期成同盟会の総会へ出席。先日は新しい大仙市長さんと初めて雄物川関係の同盟会で席を同じにしましたが、きのうの総会では、やはり新たに湯沢市長に選出された鈴木俊夫氏と、以前と同じように同盟会員として席を同じくしました。

▼今日の写真は、先日撮りだめしていた残雪須川高原の森と池塘の一区画です。

お目当てはミズバショウとともにリュウキンカの花でしたが、酸性の強いここの土壌と水条件はリュウキンカの植生には適していないのか、秋田側国道近くの湧水流れの水辺には一本も見えませんでした。村内に住みながら、同じ国定公園内でも栗駒山麓にはすべてにおいて不案内なこちら。少し離れた焼石山麓とは植生にいろんな違いがあるようでまたひとつ勉強になりました。栗駒山麓でも宮城側にはリュウキンカが見られるようです。

さて、雪解けが始まったばかりですからミズバショウを除けば野草の花はショジョウバカマぐらいで、ほかにはなし。木の花では、イワナシが可憐な姿を見せてくれます。ここの高原の本格的な花競演は6月からかな。来月に入ったなら、これらの池塘周囲は花*花✾花の季節が続くでしょう。

湿地には、山菜のウルイ(ギボウシ)とよく間違えられるというコバイケイソウ(毒草)が、そういえばなんとなくウルイと似た姿で葉の緑を濃くし始めています。まるで人がつくった棚田のような池塘は、花がなんにもなくても、ただその特徴ある池と水がつくる形だけで人目をひく魅力をもちます。

高原の5月から6月半ばはやはりタムシバが圧倒します。この花はクマも大好物なので、時々声を出しながらブナの森を歩きました。まだ残雪にネマガリタケが押さえられていますが、雪解けはたちまちのうちに進みますから、雪を渡って森をほぼ自由に歩けるということでは今が限界の様子です。

もう少し経つと、この高原は厚い笹の海となり、過去にはタケノコ採り遭難多発の山へと一変してきました。今年は、一定の遭難予防となるだろう対策も考えられていたようですが、果たしてどうなるか。過去のここでの捜索活動などをふりかえり「今年は遭難無きよう」願いながら雪上を歩きました。

ところで、同じ森でも若葉の森に漂う空気を吸うと、朽ち始めている五臓六腑すべての疲れが癒やされ洗われるようで、さわやかな「気」が体をす~と濾過してくれたような気分になります。この村に暮らしている私でもそう感ずるのですから、都会の人々、あるいはちょっと気分がすぐれない方など、ブナが芽吹く高原の「気」に触れていただいたなら、「なんぼが、体さ、えんだが(どれほど、体に、いいことか)」と思いますよ。

小学校運動会

19日は雄物川改修整備促進期成同盟会の総会で大仙市へ。改選後、大仙市長に就任されたばかりの老松博行氏が会長に就かれての初めての総会でもありました。

▼それを終え、午後は村役場で国道342号整備促進期成同盟会の監査を行いました。一関市の職員さんたちが、342号の須川高原越えで村にお出でになられての監査です。同国道については、岩手側の真湯~須川高原までの狭隘区間の改良整備がわが村としても強い要望です。両県にとって、須川温泉や栗駒国定公園山麓自治体の周遊観光客増をはかるうえで最大のカギとなる課題でもあります。

「大型バスが待避なしで普通通行できるよう、この道が改良されれば」というのは、観光業者さんはもちろん、須川温泉を訪れる多くの方々の声です。観光立国を宣言する国にしては、なんとも理解しがたい国定公園を貫く看板観光道路整備の遅れ。改良整備への道筋を国や県は早くつけてほしいものです。

▼19日は日程が集中、監査を終えてから村商工会の総会へ出席。「地域振興策について、村の資源活用の内発型産業振興と外から呼び込み型の振興策を対立させず、それぞれの積極面を活かすべき。先駆的な村の新規起業支援策、雇用確保策はあるが、成果・実績においても全国に誇れる結果をあげてほしい」旨をあいさつで一言触れました。

▼20日は村小学校の運動会。真夏を思わせる好天に恵まれ、駈ける子供・保護者たちも、応援席も、お昼のお弁当を囲む席も、みんな快適。空には雲が色づく「彩雲」もみられ、「これは、縁起がいい」の声も。この土、日曜から、村は田植えのシーズン入り。運動会の歓声とともに、田植え機械の軽快な動きもみられた村内でした。

シロヤシオツツジ観賞詣で

「そろそろ咲いている頃」と、シロヤシオツツジ(ゴヨウツツジ)をながめる目的で今年も須川高原を越えて妻とともに向かいました。

焼石岳が天然植生の北限とされるシロヤシオツツジ。同じ栗駒国定公園内の栗駒山麓でも大群生地といってよいほどの見事なシロヤシオが見られます。ここは、奥羽山脈の多雪地帯としては最も北にある貴重な大群落植生地ともいえるのでしょう。

この群落は樹齢などおそらく100年単位の時を刻んでいる様子。すばらしい樹形と花は私らの目を強く惹きつけます。同じ積雪地帯であるのに、県境をはさんで秋田側には一本も見られないシロヤシオの不思議。植生にとっていったい何が制約となって秋田(日本海)側には根を張らなかったのでしょうか。

ブナの萌えが須川高原にもまもなくたどり着こうとしています。県境直下の国定公園内は、残雪の白さの中に萌えたばかりの若葉が映えます。

高原のタカネザクラは咲き始め。沢沿いに芽吹く木々の中で、華やかな紅一点のベニヤマザクラは見頃の時をむかえています。

お目当てのシロヤシオは、花が真っ最中だと遠くからでもタムシバ群落のように白い集団が目立つのですが、今年はやっと咲き始めたばかり。まだつぼみだけの樹もありました。昨年はほぼ同じ時期で花が散り始めていましたから、今年はやはり春が遅れているようです。もう2~3日したら花満開に彩られた樹姿をみられるでしょう。

そばにはムラサキヤシオやムシカリ、それにキイチゴの花も観られました。

5月の高原一帯は、秋の錦と同じように山が輝き萌えるとき。むかし、むらのマタギたちがクマ猟に駈けた「アザミ」や「クヒキ」などと呼んだ県境尾根のクラ(崖)や、遠くの焼石連峰などをながめ、沿道のブナから若葉が発する「元気の素」をいただきながら、今年のシロヤシオ観賞詣での帰路につきました。

代掻きの段取りを整える

きのう畦塗りを仕上げ、ノデ刈り(代掻き前におこなう畦と土手の草刈り作業をこう呼ぶ)も済ませ、いつでも代掻きができる段取りを整えました。あとは、来週の代掻きと田植えを待つだけです。

一休みする土手には、ゼンマイやアザミが採れ頃です。

作業を終えてから、田んぼの土手に栽培しているゼンマイを少し手折りました。厚い雪の吹きだまりがあって雪解けが遅いわがたんぼの土手ではゼンマイがいま真っ盛り。芽を出したばかりでこれから採り頃をむかえる株もいくつかあります。

畦塗りはじめ

農繁のため、農業委員会の5月総会はきのう午前8時半から開催。所有権移転や農地中間管理機構を通じての利用権設定にかかわる議案審議などを行いました。新たな体制を選出するための農業委員や農地利用最適化推進委員の公募状況も確認しあいました。

▼会議を終えてから、たんぼの畦塗り作業にとりかかりました。この作業は、一年増すごとに、腰と腕、足への負担を強く感ずるようになっていて、「あど、何年、やれるべぇ」などと、毎年同じようなことを語りながらも結構楽しく鍬を動かしました。畦塗りには、塗り終えた後の仕事の達成感になんともいえない気分よさがあるもので、それを味わいたくて手作業を続けていると言ってもよいほどです。

作業をしているたんぼの脇にはアザミが成長し、トッコ(茎)が食べ頃です。それを見た妻は「こんにゃ、アザミじるだ(夕餉は、アザミ汁だ)」と言い手折りました。おいしく美しい実を結ぶモミジイチゴも、たんぼ用水路脇でいま花が盛りです。

家のまわり100㍍内ほどにもたんぼそばにも、アザミの茎やウルイ(ギボウシ)、ミズ(ウワバミソウ)がいっぱいですから、これからの季節は、味噌汁の具や鍋物に「ちょっと、山菜ほしい」と思えば畑に栽培しているのと同じようにこれら野の菜が利用できます。山里に暮らしていての幸せを感ずるのは、私の場合はこんな時です。

▼先日、里の山で目にしていたおいしそうなアイコ(ミヤマイラクサ)、それにニリンソウとイカリソウの花です。里山では、野草たちの花の競演はまもなく盛りを過ぎようとしていますが、美しさが目につく木々の開花は、ムラサキヤシオツツジに続きレンゲツツジやヤマツツジ、フジ、ミズキなども出番を待っていて、まだまだしばらく続きます。