「そろそろ咲いている頃」と、シロヤシオツツジ(ゴヨウツツジ)をながめる目的で今年も須川高原を越えて妻とともに向かいました。
焼石岳が天然植生の北限とされるシロヤシオツツジ。同じ栗駒国定公園内の栗駒山麓でも大群生地といってよいほどの見事なシロヤシオが見られます。ここは、奥羽山脈の多雪地帯としては最も北にある貴重な大群落植生地ともいえるのでしょう。
この群落は樹齢などおそらく100年単位の時を刻んでいる様子。すばらしい樹形と花は私らの目を強く惹きつけます。同じ積雪地帯であるのに、県境をはさんで秋田側には一本も見られないシロヤシオの不思議。植生にとっていったい何が制約となって秋田(日本海)側には根を張らなかったのでしょうか。
ブナの萌えが須川高原にもまもなくたどり着こうとしています。県境直下の国定公園内は、残雪の白さの中に萌えたばかりの若葉が映えます。
高原のタカネザクラは咲き始め。沢沿いに芽吹く木々の中で、華やかな紅一点のベニヤマザクラは見頃の時をむかえています。
お目当てのシロヤシオは、花が真っ最中だと遠くからでもタムシバ群落のように白い集団が目立つのですが、今年はやっと咲き始めたばかり。まだつぼみだけの樹もありました。昨年はほぼ同じ時期で花が散り始めていましたから、今年はやはり春が遅れているようです。もう2~3日したら花満開に彩られた樹姿をみられるでしょう。
そばにはムラサキヤシオやムシカリ、それにキイチゴの花も観られました。
5月の高原一帯は、秋の錦と同じように山が輝き萌えるとき。むかし、むらのマタギたちがクマ猟に駈けた「アザミ」や「クヒキ」などと呼んだ県境尾根のクラ(崖)や、遠くの焼石連峰などをながめ、沿道のブナから若葉が発する「元気の素」をいただきながら、今年のシロヤシオ観賞詣での帰路につきました。