深山の春の幸

田植えを終えての午後、合居川渓谷へ入ってみました。

まだ国有林内の林道には一箇所厚い雪崩の塊があり車両は通行止めです。積雪がそれほど多くなかったのにこういうかたちでこの季節まで多くの雪が残るのはめずらしいこと。雪崩の大きさは降雪の多少にあまり関係ないことをあらためて教えられたところです。

雪解けの遅い雪崩跡の斜面は、里山ではすでに過ぎた春一番の山菜がいま真っ盛り。ウド、アエコ、アザミの茎、そしてシュデコ(シオデやタチシオデ)とならんで「山のアスパラガス」と私たちが呼ぶナルコユリでしょうかそれともアマドコロでしょうか、みんな食べ頃です。

雪崩跡は、村人が好んで食すサグ(エゾニュウの仲間)の中心茎もちょうど採り頃です。クマも相変わらずサグの山から離れずに日々を過ごしているようで、茎を食べた跡が斜面一帯に見られました。仙北市方面のタケノコ山に入った60歳代の女性が、クマに襲われたとみられるいたましい事故が報道されました。タケノコもサグもクマにとってこの季節は主食のようなもの。山菜採りは「常にクマがそこにいる」という警戒が欠かせません。

ところで、この季節には春のキノコたちとも出会えます。雪崩に運ばれ横たわっていたミズナラ大木の枯れ木には天然のシイタケが、同じくイタヤカエデの枯れ木にはヒラタケが顔を出していました。2つとも味噌汁で深い味と香りを楽しみました。

雪崩が落ちる谷は堅い雪の帯ができています。ブナの森には、春を告げるエゾハルゼミの鳴き声がいっぱい響きます。この鳴き声が聞こえるようになると深山のタケノコ採りもいよいよはじまりです。