晴天を待って再び仙北街道筋へ(その2)

休みを終え歩きはじめてしばらくしたら、ある崖上部の雪が消えたブナ林の中に大きな黒い塊が見えます。生きものを見る長年のカンから「あれはクマだ!」と思いましたが、その塊までの距離が100㍍ほどはあり、しかも樹下は柴木が厚くなっていて塊が隠されますから識別がつきません。足跡の方向や位置からして、10日に写した親子グマでしょう。

双眼鏡で確認しようとリュックを下ろそうとしたら、その黒い塊が分かれてブワーと動きました。「動いた」間違いなくクマです。しかも塊はほかにもありますから1頭ではありません。双眼鏡で確認したら3頭です。雪上の足跡が向かった方向の崖にいたのですから、林の中をジクザク歩きした母子3頭のようです。おとといあたりに冬眠を終え、雪消の進んだクラ(崖)で過ごそうと遠くまで移動し、ここで日向ぼっこでもしていたようです。

こちらのカメラは双眼鏡よりはるかに望遠度が低いのでよく識別できませんが、なんとか3頭らしい黒いカゲは写真でも確認できると思います。子連れのクマですので近づけば危険で、これが安全ぎりぎりの撮影距離でした。

双眼鏡をのぞいたら、母親が仰向けになり後ろ足を上げ、それに子グマたちが乗っかったりして戯れています。まもなく、もじゃね(厚く混み合って生えている)柴木の中をゆっくり移動し、小さなヒド(窪み)に入って視野から消えました。そこはわずか5㌃ほどの雪消の中、上下左右みな真っ白な雪ですから待っていれば撮影機会は確実にあったのですが、危ないし「親子の邪魔をしないことだな」と、無理をせずにその場を離れました。

当初の予定以上に距離を伸ばしたので帰りは足が少し疲れました。この日は鳥海山もふくめ山の眺めがすばらしい一日でした。休憩場所のブナに止まったアオゲラが、キツツキ特有のいつもの鳴き声ではなく、いろんな声音を出しておかしく鳴きはじめました。こんなアオゲラの鳴き声ははじめて聞くので、「あれ、これはオス鳥で、もしかしたらメスへの求愛の鳴き声かな?」などとも思いながらカメラを彼にもむけました。

ブナの根空きも進み、あたたかな陽射しに光る渓流そばにはバッケ(フキノトウ)やユギノシタキノゴ(エノキタケ)がなんとも春らしい景色でこちらの目に止まります。雪消の早い雪崩跡では国有林のフクジュソウも咲き始め、カタクリはここではもう過ぎ具合です。

往きも帰りもホテルブラン分かれの交差点まですべて歩きなので、コースはなるべくまっすぐ取り。明通から間木に下りようかなとも思いましたが、どうも足が苦しいので今回はそのコースは止めに。帰りは狼沢境からスキー場のリフト終点を経て国道除雪やカントリーパーク除雪作業を眼下にし、西を向いては集落を眺め、長沢の尾根を下り、「竹まるぎっぱ(まるくは束ねるの意。笹竹をまるいた場所なので竹まるぎっぱ)」に下りました。

帰宅は5時。前日の雨で雪に足をとられ歩きにくい箇所があり、こちらの年齢にしては少し体にきつい山行となりました。歩数計は約3万歩の雪道歩きを刻んでいました。