冬眠明けのクマ公さんたち

春4月は、冬眠明けのクマたちと出会えるときです。

30数年におよんだ趣味の狩猟や、あるいは山菜・キノコ採りなどで、里山から奥羽の深山までクマたちの棲む山々を歩いてきた当方。なので、むかしのマタギや先輩たちからつたえられてきた冬眠穴をはじめ、クマが今も冬眠につかっている穴、あるいはつかっているらしい穴をふくめいくつかの所在が頭のなかに入っています。

それらの冬眠穴のうち、今もクマが毎年、あるいは隔年で入り続けていることを確認できて、なおかつその場所を知るのがおそらく自分一人だけだろうというのは、私の場合は3つの冬眠穴だけでしょうか。それはつまり、銃猟をやめてからここ数年の山歩きでこちらが新しく発見した穴ということです。

そんなことで、春山歩きと冬眠明け直後のクマとの出会いを趣味とする私。里の近くにあるその越冬穴のうちの一つに出かけてみたら、たまたま冬眠を終えて穴の入り口で体をほぐしていた2頭のクマが確認され、1頭は、そばの木にのぼる姿まで目にすることができました。こちらもたまたまでかけたのですから、これは天の誘い、とりはからい。運がいいとはこんな時のことをいうのでしょう。

最初の写真で、右に写る一部の姿しか見せないほうが頭が少々大きいように見えますから母親?で、木に登っているのはフルゴ(古子・昨年の冬に生まれた1歳を過ぎた子ぐま)でしょうか。ちなみに、今年の2月頃に生まれた子グマは「ワガゴ(若子)」とよびます。

それでなければ、母親とフルゴの母子3頭がいて、姿を見せたのはたまたま2頭ということなのかもしれません。クマはまだ穴の入口だけでの動きで私からの視野が狭く、いったい母子は2頭なのか3頭なのか全体の様子が確認できませんでした。

高性能の望遠レンズを持たないので、クマまでの距離を50~60㍍ほどまで近づき撮影しました。聴力は人間以上、嗅覚は犬なみに敏感という彼らに気づかれないよう、風の向きや音にはとくに気をつかいます。木陰に身を隠しそろりそろりと雪上を這い、あらかじめ決めていた危険を避けられるギリギリの地点から、時に息を止め、写しはじめました。

クマの視線にこちらの動きが入らないことを願い意識しながら、最初はそれこそ固唾をのんでシャッターを押します。こういう時ですね、猛禽類など野鳥観察の方々が使うような高性能望遠レンズがあればと思うのは。

クマは冬眠開け直後。なかなか全体の姿を長時間見せるほどに動きがまだ活発ではなく、見える範囲で姿が確認できたのはわずか8分間だけ。冬の間にややかたばった体を少しほぐして穴の中にまた入ったらしく、いくら待っても後は姿が見えずです。しばらく粘ったものの、こちらも寒くなったのでひき上げました。