災厄遮断の願いを伝える「鹿島様」

多くの人の命が短い期間で失われることが人類の歴史には度々ありました。

最も多くの人命が奪われたのは人災の最たるもの戦争だったでしょうが、それを除けば、自然災害とともに人類を脅かし続けたのは流行病(はやりやまい)、今でいうところの感染症だったでしょう。

村でも、いわゆる伝染病に脅かされた歴史を「郷土誌」は綴っていて、昔の人々が流行病を含む災厄が部落に入り混まないよう身をまもるために、集落の入り口に建てた石碑(塔)で私たちはそれを知ることができます。

塔のなかでも病や災難を防ぐための願いがとりわけ強くこめられたのは「鹿島様」と伝えられます。村で「鹿島様」といえば、歴史が深く代表的なのは天江の「鹿島様」(1~2枚目の写真)。各地によく見られる藁作りの鹿島様ではなく、人の像が彫られている天江の鹿島塔はめずらしいらしく、その道に通ずる方々のなかには、村外からもここに見学に来る姿が時々あるそうです。天江の「鹿島様」には、集落が、戊辰戦争にちなむ災難から免れたことなどにちなんだ伝承もあります。

過ぎた日曜日、その「鹿島様」をじっくりながめ、そのついでに、平良、岩井川、手倉にある鹿島様(3~5枚目の写真)にも足を止めました。村にはその鹿島様の塔が12基あるとされています。

現世では最強の感染症のひとつとなった新型コロナウィルスが地球規模で猛威をふるい続けています。感染症予防では、心がけるべき必須の方策諸々について、個人や集落、村でできることに最大限のつとめをすることが第一です。が、昔の人々の思いが込められている「鹿島様」にも、新型ウィルスの入り込み、災難をくい止めるための、心のささえの役割を果たしてほしいものだと願いながら四つの塔と向き合いました。