山も里も節目の彼岸入り間近

新型コロナ禍なので花火の打ち上げもなく終わった「増田のお祭り」。花火ということでは県南の祭りの象徴でもありましたが、今年はドーンの花響く音を聞かないうちにもう祭りの14日、15日を過ぎてしまいました。

その「増田のお祭り」の頃になると、昔から村のハギミ(山菜、キノコ採りを生業とする人)の方たちは早生ミャゴ(マイタケ)をめざして山入りしました。3,5,9がつく日に市が立つ増田の朝市、とりわけ祭り前の市にそのキノコを出すためです。

いま、そういうハギミの方々の多くは鬼籍に入られたり、体調がすぐれず山入りできなかったりです。それに代わって山入りするのは、山の幸採取を趣味とする村内外の人々で、9月も半ばとなれば幾人かの人々の足跡がミズナラの森につけられます。

そういううちの一人であるこちらも、きのう午前、近くの森にわずかの時間下見に入りました。しかし、まっしぐらに向かった早生ミャゴの出るミズナラ巨木数本にはまだその気配はゼロ。猛暑続きでしたから今年は発生が遅れるのか、それとも出の良くない年となるのか、もう一、二週間からほど経たないと豊凶全体の様子はわからないようです。

きのうの森では、キクラゲと、老菌となってしまったトビダゲ(トンビマイタケ)が見られただけ。沢にはダイモンジソウの花がいずこにも盛りで、サラシナショウマも、動物のシッポのような長い花を咲かせ始めていました。ヤマブドウもだいぶ色づいてきました。

ところで、沢を歩いていたら思わぬ出会いもありました。それは小さな水たまりにのこされてしまった2匹のイワナ。そのイワナが棲んでいた水たまりは、もとは小さな淵で、水量の多いときにはイワナが棲むのにほどよい淵だったらしいのです。それが、秋になって沢本流の水量が減ったために細い流れに来る水がさらに少なくなり、どうやら1㍍ほどの広さで深さは10㌢ほどになってしまった小さな淵から脱出する機会を失ったらしいのです。20㌢を少しこえるイワナ2匹は、私に驚いて水のほとんどない陸にまであがったりしました。

▼花の写真は、冷涼な村の気候を活かしてリンドウ栽培にとりくんでいる村内下田の古谷実さん宅です。きのう午前所用で訪れた際に、花を出荷用に整える作業の真っ最中でした。

彼岸入り間近となり、リンドウの大量出荷ということでは今シーズン最後のピークをむかえているようです。山も里も、彼岸はいろんな意味で指標を多くもつ季節なのですね。

私の同級生や前後2~5年ほどの同窓の先輩や後輩の方々には、村の農業をささえる柱となって活躍する篤農家が幾人もおられます。いわゆる団塊の世代やその後世代の昭和20年代生まれのみなさんです。

同級生の古谷さんも農業の技に秀でたそのうちのお一人。花はもちろん「野菜をはじめ作物なら、何を作っても優れた品質に仕上げる」という栽培技術をもたれ、村産業祭や全県規模の種苗交換会などでもご本人はもちろん、葉たばこ栽培で著名な祖父や父の代からご一家は優れた賞に輝いてきました。まさに「篤農家」中の「篤農家」という存在の古谷さんご一家です。

同級や同窓の多くのみなさんがこうして農業部門の柱となって活躍されているのは、私の誇りであり、それはひろく村民の誇りでもあります。自分の好きなこと、得手をのばして、一人一人、自分しかできない心の輝きをもてるのがいちばん幸せな生き方といえるのでしょう。