歴史の道・仙北街道(手倉越)歩き(その4)

つなぎ沢の最後の沢渡りを終えてからはゆるやかな登り道が続く。

街道全体が豊かな原生ブナの森の連続だが、なかでも国内有数の森林生態系保護地域に指定される小出川中上流域はその保存地区であり核心部となる。千古斧の入らぬ原生林、豪雪の土地特有の典型的な大木の林は威厳すら感ずるほどの見事さだ。ここを通る時は、一瞬息を止めて見入り、深呼吸をしたくなる。

「又鬼坂」を登り終えてからは、展望の利く「大ぐるみ山」コースと迂回コースへと、隊はここでいったん2つに分かれた。疲労がピークに達した方々もおられたからである。

道の刈り払いがしばらくされていないのでやはりここも草木が結構厚く道を覆い歩きにくい。草と柴木をかきわけ「大ぐるみ山」到着は3時。「大ぐるみ山」の頂上も草が生い茂りいつものようにきれいにされてはいない。雲はまだ厚く遠望は利かないが、栃ケ森などははっきりと山の輪郭が見える。ここでも「山の神」に次いで記念写真を班ごとに撮る。

さあ、後は登りはなし。平坦なオウレン街道を進みながら左右のブナ林をながめ、やがて街道から分かれて大寒沢林道への急坂を下る。ここは疲れた一同の足に厳しい下りで、しばらくつらさを堪える歩きが続き、それが終われば終着点が待っている。

下りの途中で下方に向かい大声をあげたら、駐車場方面からも反応の声がある。後で聞いたことだが、村のほうでは日中に強いにわか雨があったらしく、我々がいた山脈方面は黒雲に覆われ見えなくなり我々の踏査行を心配されたようだ。予定より少し遅れたがまずまずの時間で全員無事に到着し、踏査の一同はもちろんだが、それを送迎していただいたみなさんも「まずは安心」で、出迎えのみなさんが用意してくれた冷たい飲み物でめでたく乾杯、最後の記念写真をおさめた。

前述したように昨年は悪天で交流踏査が中止となり、歴史の道百選になってから、両県側がいっしょに踏査をしたのははじめてのこと。参加されたみなさんには、それぞれ街道の管理の実態もご確認いただいたので、今後はそれについても前進がはかられるものと確信している。今年は「新たな視点での合同街道踏査」の始まりの年となったが、来年からはさらに充実した街道歩きが期待できるものと思われる。隊長をつとめられた鈴木さんを始め、岩手側からご参加の各位に心からお礼を申し上げ、また村の関係者と車などの手配にご尽力いただいたみなさんにも厚く感謝をのべたい。

最後に、街道歩きの途中でカメラにおさめたキノコと花たちを載せて、踏査行だよりのしめくくりとする。キノコは順に、チチタケ、アカヤマドリ、タマゴタケ、そして私のように老い始めたトンビマイタケ。花は、ダイモンジソウ、トリカブト、チョウジギク。

▼今回参加いただいた岩手県議の千葉秀幸さんは、大リーグで活躍中の菊池雄星選手や大谷翔平選手の母校である同じ花巻東高校の野球部ご出身で、平成17年夏の甲子園大会に2回戦まで出場した時の選手であることを知った。岩手大学教育学部を卒業後、水沢信用金庫につとめられ、現在は家業なのだろう建具製作所の取締役という経歴をもつ方である。