花観賞のつもりが

高山に咲くタチギボウシに似た花たちが村の沼地や湿地でもいい花かたちを見せています。

童と連れだって今年初めて訪れた沼地。童はイモリやカエル捕り、こちらはタチギボウシやヒツジグサの花とジュンサイにカメラを向けるのがお目当てで向かいました。

ヒツジグサは惚れるような花姿はみられず花期も過ぎ具合でしたが、タチギボウシは花真っ盛り。

こちらがその花にカメラを向けていたら、網を手にしていた童が「あっ、マムシいる」と大きな声をあげました。驚いて駆けつけたらジュンサイの葉っぱが浮かぶ水上にヘビが悠然としています。まちがいなくそれはマムシ。岸辺の草むらにいて人の動きを感じ水上に出たのでしょう。すばやく処分しましたが、危ないところでした。

さてそれは一件落着。ところが、それから少し経ったら、また「あっ、ヘビ」と童の声。今度は本州最強の毒蛇ヤマカガシが水上をすばやく泳ぎ渡り草に隠れました。童は、ヤマカガシはまだ判別ができないようです。

余談ですが、私らが童の時は、ヤマカガシが毒蛇ということを学校でも大人からも教わったことはなく、おそらく当時の大人たちもヤマカガシは毒蛇とは知っていなかったでしょう。

花と静かな沼景色を愛でようとしたのに、毒蛇2種の出現でこちらの癒やしの気分は消え失せてしまいました。しかし、童にとってはとても貴重な体験、毒蛇を知るのによい機会となったようで、目がいきいきと輝き、帰りの足取りも言葉もはずんでいました。

何年前だったか、田んぼで捕獲したマムシを見たことのある童ですが、「どうして、マムシとわかったの」と問いかけたら「図鑑で見たから」と言いました。こういうかたちで図鑑が役にたつこともあるのですね。

どうしたわけか今年は、妙に毒蛇たちと縁のある年です。よく考えれば湿原はカエルや小動物たちの生息場所ですから、それを格好の獲物として狙う毒蛇を含む蛇たちが集まりやすいのはあたりまえのこと。とりわけヤマカガシは水辺が好きです。周囲は毒蛇たちのこの上ないすみかでもあることを教えられたところです。野外活動などで沼や湿原の岸辺に立ち寄られる方々は要注意、草の繁茂するところへはズック靴やサンダル履きなどでは危ないですよ。