童たちといっしょの焼石岳登山(その2)

沼から9合目まではいつの季節も花の道。急登は体にきついが花と景色の観賞にはうれしい道のりだ。各登山コースが交差し分岐の9合目に着いたら風がさらに強く、頂上までの岩上や稜線歩きでは体が動かされるほどの強風だ。
山の神で「登山ができることに感謝」や「それぞれの願いや思い」を一同合掌であらわし頂上をめざす。頂上近くになったら帽子など風に飛ばされるものは手に持たなければならない。真夏なのに少々寒さを感ずるほどの風なので「こりゃあ、頂上での長居はムリかな?」と思った。先に頂上に着いて同じコースを下山してきた「大館の方」は、「霧で何も見えなかった。風も強かった!」とすぐに引き返したことを語りかけてくれた。
花の百名山も予想したように夏の花の大部分は上旬で盛りを終わり、ハクサンシャジンやタカネナデシコ、ハクサンフウロなど夏の名花の見栄えある花姿は遅咲きがごくわずか。マルバダケブキやトウゲブキはまだ花盛りで、秋の花のウメバチソウやミヤマリンドウは蕾が多いが、咲き始めている株も所々にある。
頂上到着は10時20分。やはり風がものすごく強く濃い霧が激しく西から東へ流れている。
記念写真を撮ってすぐさま頂上の東側に寄り、風をしのいで早い昼食タイムとする。
山仲間のAさんは、つい先日に栗駒と秣岳をお子さんたちと縦走したばかり。でも、ご本人も、焼石は昨年に次いで二度目の登山というお子さんたちも、栗駒・秣を縦走した直後とは思われぬほどに歩きはとっても軽快で感心。
ところで、Aさんとの山行で気楽なのはその健脚ぶり。おそらく同じ年代の男性のみなさんの多くもその体力と脚の力にはかなわないだろう。それに楽しみなのはAさんのその明るさとともに食後に沸かしてもらえる熱いコーヒーだ。この日は、コーヒーの前に温かな味噌汁まで振る舞っていただいた。使う水はいずれも8合目のタゲ(焼石)のすゞ。それをコーヒーと味噌汁6人分をボトルに詰めてAさんが背にしたもの。幾重にもなるうれしさありがたさを思いながらみんなで味噌汁とコーヒーをごちそうになる。
昼食をとっていたら時折あたたかな陽射しが霧の合間から注ぎ、霧も瞬間的に途切れる時間が多くなった。眼下の姥石平がパアーッと明るくなって目に入り、胆沢平野も霧の合間から確認できる。辛抱して頂上で待っていたかいがあったというもの。「辛抱」「耐える」を経ての幸、不運は山歩きではよく体験すること。以後も、流れの速い霧と山がつくる光景を食事をとりながら満喫できた。こういう霧の日でなければ眺められない山と出会えて一同からは時々「アーッすごい。ウオーッきれい」など喜びの声があがる。流れる霧も山では立派な景色となる。
休憩場所では、童が足下にいる真っ黒な小さいカエルを見つけた。めずらしいのでみんなで眺めるが種はわからない。帰宅して写真をアップしたら背中にガマガエル(ヒキガエル)特有のイボイボがある。なんとそれはガマガエルの子だったらしい。
頂上には我々以外は幾人もおらず、休憩をとっているのはすぐそばの親子らしい3人だけ。ほかにもわずかの登山者がみられるが、みな頂上での休憩はあきらめすぐに下山の方が多い。
昼食後はいつものように岩手側コースに下りて姥石平をまわる。すれ違う登山者はごくわずか。夏の花のシーズン盛りがすぎたとはいえ、お盆夏休みシーズンの焼石では考えられない人の少なさだ。
泉水沼まで下りたら霧の晴れる時間が長くなり、さっきまで滞在した焼石の山体がそれまでよりも長く姿をあらわすようになった。雪解けの早いところでは咲き始めのミヤマリンドウが多くなり、花盛りのタチギボウシが風に大きく揺れている。背が低く茎がなよなよしていないキンコウカは風にも揺れず、群生だからこその輝きを見せている。