多様さを尊重し合う社会へ

12~15日にかけては都内で会議の連続でした。

県選出政府与党議員への要望と懇談会にはじまり、NHKホールでの「全国町村議会議長会創立70周年記念式典と第63回町村議会議長会全国大会(豪雪地帯の全国大会も含む)」、そして地方紙でも報道された「厚生年金への地方議会議員の加入を求める全国大会」、「地方議会活性化シンポジウム」、それに「新過疎法制定実現総決起大会と定期総会」という一連の会議です。

民主主義が発達した国では、国民がうみだした財を国民と国土の均衡ある発展に注ぐのが肝要と思われます。が、日本はこの点で世界の先進にかなり遅れをとっているようで、地方と都市、富裕層とそうでない層の格差拡大が年々際立つようになっています。経済や教育、学問などをふくめ多くの指標で「日本は先進国と言えない。あるいは近い将来言えなくなる」という事例が指摘され、各分野でいびつな社会構造が目立つようになっています。

今回の一連の会議は、「そうした国土発展の不均衡を是正しなければ我が国の発展はありえないのですよ」ということを政府と国会にわかってもらうための、地方と町村議会の切実な叫びの場ということでもあります。

その叫びの一つ町村議会議長会の各決議要望も、期限が切れる過疎法の新たな制度堅持も、同じ地方のなかでもとりわけ農山漁市町村からあげられる声は切実です。政府はもちろんのこと、国会も与野党問わずこのことは力を合わせて制度創設にがんばってほしいもの。

その与野党問わずということからいえば、大会などの運営ではやや気になることがありました。それは、厚生年金関連と過疎法関連の大会は与野党問わず政党への来賓の案内がなされ、それぞれの政党からご挨拶がありましたが、議長会の創立記念式典は、政党代表としての来賓案内出席と挨拶は最大与党ひとつだけであったということです。

民主主義のカナメの一つは多様な意見、存在を認め合い大切にするということでしょう。地方でも、全国規模でも、全体が関係する大会や催事、要望などでは、一定の基準のもとで与野党問わず案内し出席していただき、活動を理解してもらいご意見をうかがうというのが筋ではないかと思われます。わが村などの中央要望ではそういう姿勢がずっと貫かれ、与野党問わず村に関係の近い国会議員に広くお願いにまわっています。

この点で私の記憶には、幾年か前、ある政治家がテレビで語られた時の言葉が印象に濃く残っています。ある政治家とは、現政権与党に所属されている元衆議院議長のI氏の言葉です。I氏は、日本の昭和の歴史か政治史を念頭に発言されたのだと思われますが、「多数の意思が誤ったということも過去にはある。だから、少数意見も尊重しなければならない」という旨を語られました。録音していないので表現は正確ではありませんが、「多数の側がまちがうこともある、だから少数の側も大切にしなければならない」という考えなのだと理解しながら、私はI氏の言葉に注目しました。国政最大与党の重鎮である方が発したこの言葉の意味は大きいと思います。

「少数の立場・意見を尊重する」これは、思想信条の少数派、考え方の少数派を大切にするという範疇だけにあてはまる姿勢ではないでしょう。たとえば、中央からみて「都市は多数派、地方は少数派」という枠で世の中の制度をくみたてようとすることへ「それはおかしい、危いぞ」と、そういうことへの警鐘としても私はとらえることができます。

民主主義の社会とは、「お互いの存在と考えを認め合い、お互い様の心で社会が成り立ち、みんなができるだけ等しく生きられる」そういう世の中だということではないでしょうか。狭いくくりだけでしか物事を見ることができなくなれば、社会は硬直し、それが政治であれば、やがて「独善、専横、圧政、独裁」「翼賛政治」の道へ向かいかねません。

我々の社会は、もっと柔軟・幅広い視野で、多様性をあらゆるところで認め合うことを大切にしたいもの。今回の各大会や会議、シンポジウムを通じて一番感じたのはそのことです。人間は互いの多様性を認め合い、ほかの意見もよく聞き、なおかつ尊重し合わねば。

▼写真は1年ぶりの代々木公園の秋とNHK放送センターです。バラ園のそばにある池周囲は鳥たちの楽園でもあります。時々エサを与える人がいるからなのか、人慣れしているからなのか、鳩ならまだわかりますが、警戒心の強いカラス、スズメも足下まで寄ってきます。狩猟シーズンに入り標的となっているマガモやカルガモたちも、ここは安住の地、人のそばでゆっくり休んでいます。

町村議会議長大会が開かれたNHKホールでは、大会に先立ち創立70周年記念式典が行われ、弦楽器による祝賀の演奏も行われました。

新過疎法制定関連の大会はメルパルクホールでしたので、開場となるまで増上寺そばの芝公園で時間調整。小春日和の陽射しをいっぱいに浴びてタワーを望み、ここでもベンチの近くに寄ってきたスズメをしばらくながめていました。