今冬初めての雪山歩き

12日、今冬はじめて、山内境との尾根まで上がる雪山歩きに半日向かってみました。

晴天を見込んでいたのですが、厚い雲はなかなかとれず、期待していた岩手山など遠くの山々はついに眺めることができませんでした。

曇り空の割には気温が上がらず、杉やブナについた雪も一日中落ちずにそのまま。岩手との県境尾根筋にあるブナや杉への雪化粧が、遠目ではとっても美しく見えました。

雪原は予想に反して雪に足が二段階で深く沈みます。雪上の狩りをした者たちは、こういう雪状態での歩きを「二段ぬがりする」といい、最もきらいます。一度雪を踏んだ足が、体重をかけるとさらにもう一度下に沈むからです。こういう雪質は、深くて軽い雪よりも体力を消耗します。この日も、山内の集落が見える郡境まであがるのに3時間近くかかりました。普段より1時間は多く要したことになります。

木々への着雪が落ちずに重くなっているためでしょう、杉林の中では、その重みに耐えきれず幹折れした雪害木の無残な姿がかなり見られます。樹齢を重ねてこれほど大きくなった木がボンボン折れてしまえば価値はたちまちゼロ。それだけに、その重みに耐えて生き残り伐期をむかえた雪国の杉は、とっても強靱な材ということでもあります。

上がりの8合目ほどにあるブナ大木の根元では、いつものように小休止。更に境の尾根にあるクマの爪跡がとくに多いブナでも一息。このブナは見晴らしがよいためか、ここを歩くクマたちが100年以上も前からつけたのでしょう、代々のクマたちが生きた証を記した爪跡が見られます。昨年につけられたかなり大きな爪跡も真新しく刻まれています。そばのブナでは、実を食べようと枝を折り重ねた跡も見られます。


 

 

 

 

 

 

木々の根元には、ノウサギ、テン、ヤマドリ、カモシカ、キツネなどの足跡がいっぱい。でもこの日は、それらの生きものたちを直接目にする機会はありませんでした。


 

 

 

 

 

 

ここの尾根に上がれば、南にまっすぐ伸びた成瀬川に沿ってひらけた大字椿川方面から桧山台、仁郷のダム現場方面が真っ正面にのぞめます。

上りは八卦沢からで、下りは岩井沢へ下りるのがこの歩きでのほぼ決まったコース。途中、用水路取水口のゴミをのぞきに沢へ寄り道。この日は大きな生きものには出会えませんでしたが、その時、雪原に二種の昆虫が目に入りました。

一種はユキムシと我々が呼ぶセッケイカワゲラですが、もう一種はあまり見かけない昆虫です。さわろうとしたら、警戒してでしょう、動きを止めて手足を縮めてしまいました。厳寒に生きる小さな昆虫たち。そのたくましさに、なんだか元気をいただいたような気になりました。ユキムシは俳句では春の季語だそうです。そのせいか、厳寒なのにユキムシを見ると、寒さで縮んでいた心と体がほっこりと暖かくなるような気になります。ユキムシに感ずる春、不思議なものです。

晴天でも、気温がそれほど上がらない高山では、木々に着いた雪がやはり落ちずにそのままでした。きのう夕方など、焼石連峰の名峰三界山や県境尾根のブナ、杉などに着いたその雪景色全体が夕日を受けて輝きました。尾根でこんな景色を眺めてみたいものですね。