タケノコ採り遭難と無事自力下山

おとといの夜9時近くになってからです、「大森山山麓でタケノコ採り遭難が発生した。明日早朝から捜索を開始するので、参加できるかどうか」という連絡が急きょ入りました。大森山麓は、全体がなだらかなので時々遭難事例がおきる場所です。

人命第一ですから、何事にも優先してそれにあたるのが我々遭難救助隊員のつとめです。「出動できる」ことを告げ、捜索活動に必要な自分なりの準備をととのえました。遭難したのが地元の山でもあり、「隣り合わせる合居川渓谷に向かった可能性もあり得る」ということも考慮し、そのための捜索行動の段取りなども先輩の隊員と連絡をとりあいました。全体方針は捜索本部が決める事ですが。

大森山の北麓は合居川渓谷のなかでも断崖の多い箇所。とりわけドヤノ沢と呼ぶシャガヂアゲから下る沢は本流との合流点近くに滝が連続し、普通の装備では沢を歩くことができず、少しの遠巻きも必要です。隣接する滝ノ又沢も同じで下流部には危険な滝があります。このように合居川渓谷にもし下れば、その現場は崖や滝など危険箇所がきわめて多く、捜索隊でもそこに入れる方は相当の山歩き谷歩きに慣れた者でないと二次遭難や事故の危険もある山です。ですからこういう場所は、県警や県消防のヘリコプターでの捜索活動が最も有効です。今は、ドローンも重要な器具でしょう。かつ地上からの捜索は、山を知る精鋭でないとムリということです。

様々な連絡を取り合いながら、「翌日6時半に隊員はバスで現場へむかう」という出動態勢に夜から朝にかけ備えました。きのう早朝にはさらに捜索に必要と思われる「資材」のことで先輩と相談などをしていたその矢先、救急車が山の方へ向かいます。それを見て「発見されたのかな?」と思ったらその通りで、「無事、自力で入山箇所に出てこられた」ということです。

遭難された女性の方は、入山した日の午後から一夜を孤独ななかで過ごされたわけですから、その間の心中は察して余りあるものがあります。ムリして歩き回らなかったのが幸いしたものと思われます。「自力下山」の報を同僚の捜索隊員の方から聞いた時は「えがった」と、家の中でみんなから声があがりました。ほんとうにホッとしました。