元検察OB連名の二つの意見書

検察庁法改正案の採決が急きょ見送られる事態となった。

SNSをはじめとする広範な批判・抗議の世論と、15日の検察OB14人や18日の元特捜検事有志38人による意見書提出、野党のみならず最大与党内部の有力な国会議員からも批判的意見などが集中した結果の採決見送りである。

この件では、「法案はもっとていねいな説明が必要」という旨の批判的見解を発信した与党内部の方々(総裁選の党員票では現総理を上回った得票実績のある元幹事長や元防衛相)の動きに注目するとともに、元検事総長をはじめとする検察OB14人や元特捜検事有志38人の方々が連名で法務大臣宛に提出した二つの意見書の全文を私はとくに注目し読んだ。

法案そのものはもちろん「改正案」と銘打たれるのだが、当然ながら法案への批判・抗議を旨とする側の二つの主張は「改定案」反対と「改定案」に対する意見書となっている。「改正」ではなく「改定」である。それは今回の法案は「改正」とは認められないからだろう、いずれの意見書とも法案の問題点を明快に指摘しながら結論として、この法案は「検察は国民の信託に応えられない」「検察の独立性・政治的中立性と検察に対する国民の信頼を損ないかねないもの」と述べられている。

法案の重要な問題点を理解するうえで、また検察OBの意見書にあるように「正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。」という見地から検察のこれまで果たしてきた役割や疑獄事件とむきあってきた検察活動の歴史の一端を知るうえで、二つの意見書は実感のこもるまことに明快な論立てとなっている。まだお読みでない方にはネットなどで是非一読をおすすめしたい。

今は新型コロナウィルス禍で大規模な集いなどでの抗議行動などはできない状況だろうが、国民の批判がこれだけ大きな法案であれば通常の場合なら国会をとりまく空前規模のデモなどをはじめ全国的な世論の意思表示はもっと大きく「見える」化されていたものと思われる。ネットでの抗議世論の広まりが何よりもそれを物語っているし、異例ともいえる採決の見送りそのものがその証でもあろう。

地方政治の小さな議会ながら、私らが常に重きをおくのは「政治の主権は村民にある」ということである。国政も、都道府県政もそれは同じで、「国民、県民一人一人の主権」が政治を動かす要であることは民主政治の理だ。国民多数の批判の声とともに、二つの意見書を読めば、法治国家であるがゆえに、この法案の再考、撤回がもとめられていることはもう疑いようのないものであると私は思う。

▼写真は、撮りだめしていた渓谷の春の風景と小鳥です。