政も商いも正道を

わらび座の新作ミュージカル「北前ザンブリコ」の招待公演があり、きのう午後は田沢湖のわらび劇場へむかいました。

新作ミュージカル公演のご案内をいただくのはいつも桜が咲き始める頃の春なのですが、今年の春公演はこれまでの作品の再演でした。新作が間に合わなかったためでしょうか、わらび劇場での今年の新作公演は夏からということになったようです。

今回の舞台は文字どおり北前船に焦点をあてたもの。わらび座のこれまでのミュージカル作品に通ずる骨格ともいえる「人はなぜ生きるのか、どのように生きるべきか」を問いかける内容なのだとうけとめながら観劇しました。

北前船は商いの荷を運ぶ船。商いイコール市場経済、イコール利益追求ということですが、利潤をめざす経済活動にも質のちがい、質の大切さがあることを舞台はうったえます。

現在の日本で顕著ないわゆるルールなき経済活動は、資本主義経済そのものをおびやかすほどのゆき過ぎた「格差構造」を、リスクとして社会に生み出しているとされます。

政府の総合規制改革会議の最も責任ある立場を長年つとめたほどの方が「そういう資本主義でいいのか」と発言し、また別の財界当事者からは、日本の「非正規労働者の増加」を改めねばという率直な声が出されてもいる昨今のようです。

真っ当な経済活動ならどなたも認めるでしょうが、ルールからはずれた商い、経済行動は卑怯な商い、卑怯な経営ともいえます。過労死も不払残業もそういう卑怯経営の下で生まれます。よく報道される諸々の経済不正、公的補助金の不正受給などもその一例でしょう。

ほんとうに優秀な経営、経営者とは、そういう「卑怯」と「姑息」な振る舞いのない、堂々と正道を歩んで真っ当な利益をあげられる方のことをいうのだと、こちらは思います。

ところで、経済と政治はきりはなされない関係にあります。

8月7日付の秋田魁紙は、その一面に、湯沢市出身のニューヨーク大名誉教授・佐藤隆三氏の「米国が異常と見る日本政治」と題する時評を載せました。それは、加計学園の獣医学部新設問題、森友問題と公文書改ざん、忖度政治、三権分立の在り方などをふくめ、ニューヨーク・タイムズ紙がそれらを論評した記事をとりあげての評論でした。

佐藤氏の評論は毎回読みます。佐藤氏はニューヨーク・タイムズ紙がとらえた「日本政治の異常」さ、「度の過ぎた違法行為」を我々に知らせます。その「日本政治」をそのまま「日本経済」の言葉に置き換えてもいいほどに、日本経済の中枢も劣化しているのでしょうか。わらび座「北前ザンブリコ」は、「日本よ、人よ、いま正道を」と問いかけているのかも。