県南食文化の象徴、盆のトンビマイタケ

過ぎた2日午後やや遅く、今年初めて沼又のブナの森へトビダゲ(トンビマイタケ)きのこをめざして30分ほど山入り。4日には2時間ほど合居川渓谷へも向かいました。

そのキノコが顔を出すブナだけをめざしたのですが、ほぼ毎年いただいているお目当てのブナの一本は冬にでも倒れてしまったのでしょう、ドーンと横になっていました。

 

 

 

 

トビダゲは典型的な木材腐朽菌。この菌にとりつかれたブナはたいがい10年前後で朽ち倒されます。例外をのぞいて、木が倒れるとキノコの出が早くなり、この倒れたブナにも一週間以上先に顔を出したのでしょう、残った根株などに老いてしまったキノコがいくつか見られただけでした。

こういう老菌のトビダゲを「飛ぶようになったキノゴ(キノコ)」と村人は呼びます。トンビ色をしたキノコの名前にそれはいかにもふさわしい呼び名です。

村の直売所には、かなり前から出ていた栽培もののトビダゲに続いて、3日あたりから天然物の幼菌も出されるようになりました。プロの方は、「今年のトビダゲ、早生は出がいいほうだが、モノは良くない」といいました。中生、晩生の質ははたしてどうでしょうか。

出始めの売値は1㌔㌘あたり3,000円。幼菌だと一塊2,500円~3,000円ほど。それらまだ軟らかいキノコは、人気があってたちまちのうちに売り切れとなるようです。大量発生の幼菌にブナの根元で運良くあたったら、10㌔で3万円。20㌔などそんなときは簡単に採れますから一日の稼ぎ高がわかるでしょう。県南のトビダゲはそれほどに値の高いきのこなのです。一日で幼菌40㌔ほどを背に(二背)することもあるのです。

その幼菌の一夜味噌漬けをごちそうになりたくて山入りしたのですが、残念ながらサンゴ状になった真っ白な幼菌とは出会えませんでした。

岩手の胆沢川流域に向かえばそういう幼菌のあるブナの木をたくさん知っているのですが、村と接する奥州市と一関市の野生キノコはまだ放射能汚染が理由で流通・販売は禁止。そのため自家食用としての採取そのものも、こちらはここしばらく自粛しています。

同じ岩手でも原発事故から少し北に離れた西和賀町と北上市は規制なし。ですから、わが集落の人々が昔からキノコ採りに通うもう一方の南本内川流域のキノコはだいじょうぶ。

そういうことなのでこちらが一番向かいたい胆沢川流域には行けません。早く、奥州市で野生キノコの汚染解除がされればと、待ち遠しくしています。

とりあえず今回は、トビダゲの老菌とチンダゲ(チチタケ)、それにワゲ(ウスヒラタケでしょう)をカメラにおさめて、すごすごと帰路につきました。