焼石の花たちに会いたくて(その1)

高嶺では春と初夏の花が隣り合わせてみられる季節入りの10日、花の百名山・焼石岳に向かいました。この日出会いたいと思っていた花はキヌガサソウ、ツバメオモト、リュウキンカ、それにミヤマオダマキとハクサンイチゲ、ユキワリコザクラとヒナザクラです。

妻には出かけるとき「キヌガサソウに会いに行く」などと告げていました。

山行にとってもっとも気になるのはお天気。前日から予報に注目していて、当日も朝4時の予報では村は「晴れ」。「これなら、今日は、いい景色がのぞめるぞ」と期待。林道終点の駐車場から歩き開始は4時37分。駐車場には、予想に反してシーズン真っ盛りなのにタケノコ採りのみなさんはまだおらず、登山の方らしい様子の車が1台だけです。

 

空は曇り、東からの風が吹き下ろします。歩き始めてすぐ目につく花は、マイズルソウやエシャガイチゴ(胆沢川イチゴ・ノウゴウイチゴのこと)、ズダヤクシュやカタバミの仲間など。いつもなら早暁からタケノコ採りでにぎわう登山道には、前記のように人の姿も声もまだ無しで、ブナの森は予想に反して静か。聞こえるは風の音と鳥の声のみ。

大森山の裾がのびる登山道五合目シャガヂアゲの県境付近は、合居川と胆沢川の分水嶺がしばらくの距離で続きます。天正の滝に落ち込む合居川渓谷の流れのうち合居大谷から分かれるドヤノサ(どやの沢・合居沢)の最上流部はこの県境までのびていて、そこには吹きだまりの雪がまだ沢いっぱい見られます。今はほとんど通いませんが、ここらは、むかしから最もシーズン遅くまでの私のタケノコ採り場でした。

登山道沿いには、ミツバオウレンやイワカガミの仲間、ツマトリソウもよく目につきます。


県境の稜線から胆沢川へ下り始めると、すぐに下方から瀬音がきこえてきます。川まで下りたら登山道に雪が残る箇所も一部あり、「これなら、キヌガサソウはまだ拝める」と見込みました。川原沿いにはミズバショウとリュウキンカも見え始め、ムラサキヤシオツツジやシラネアオイも時に見られます。


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブナ林の中にはユギノシタキノゴ(エノキタケ)も出ていて、上がるにつれ低木のムラサキヤシオやタムシバの花は盛りです。登山道を歩きながら私がいちばん数多く目を注ぐのはツバメオモト。たいがいはもう花期をすぎていますが、雪解けの遅い箇所には、花かたちも葉っぱのかたちもほれぼれする姿がいくつか見られました。凜としていて清楚で、高山植物ではありませんが私はこの花に妙に惹かれます。


時々林のなかの花たちにカメラをむけながら、8合目の焼石沼周囲到着は6時48分。ここまで上がったら風がさらに強くなり、濃いガス(霧)が東から勢いよく流れ下ってきます。立ったまま朝食をとり、まずは周囲の花たちをながめました。