村でたった一つのりんご園

村の郷土誌によれば、昭和31年頃には、菅生田から草ノ台までの9集落戸数99戸で約20㌶近い樹園地で栽培されていた「りんご」を主とする村の果樹。それが、今年には園地と呼べる状態で栽培されているのは滝ノ沢の1戸だけになっています。

歴史に深く刻まれるあの48豪雪やその後の幾度かの豪雪による被害、それに、栽培の後継者がいないことなどにより生産農家が減り、生産組織や病害虫の防除組織の維持も困難になり、それらの原因が重なっての栽培農家激減でした。

そうした中、数年前から孤軍奮闘、村で最後のりんご栽培農家となっているのがSさんです。Sさんはこちらの定時制高校の一年上の先輩です。

豪雪の歴史に耐え、いまSさんの樹園地に残っているりんごの木はおよそ20本ほど。りんごは初冬に収穫がはじまる「ふじ」です。

写真は27日に撮影したのですから、もうもぎ取りも終わった頃でしょうか。寒暖の差の大きい土地のりんごですから、味はすこぶる上等のふじと思われます。最後の樹園地のりんごと思っただけで、おいしさがさらに増すような気もしますね。

キノコ余話

名前も、食べられるのか、それとも毒なのかまったくわからないが、どうも気になり「試食してみようか」という欲望にかられるキノコとの出会いがこちらにはある。

そんな「気になるキノコ」を今年も二つの種で目にした。一つはまず試食を避けたものの、もう一つの種は、昨年も見かけて気になっていたキノコなので「よし、今年は、試食してみよう!」と思いを実行に移した。

それが、写真のキノコである。手といっしょに撮ったので大きさはほぼわかるだろうが、昨年もたった一本だけ、今年もたった一本だけ、ミズナラ林の地面に出ていたキノコである。おそらく木の根と共生する菌類の仲間と思われる。

採取して生のまま少し口に含み噛んでみたが、苦みとか特徴のある味はない。ただ、ややくせのある香りはある。まず湯がいてもらい、刺身風にしてもらった。肉厚でいかにも美味そうな一切れのうちのさらにその5分の1ばかりを口に含んだ。味はまあまあだが、湯がいたら、香りというよりも嫌な臭いといったほうがよい臭さが気になり、箸はあんまり進まない。ただ、食後に体への中毒反応はおきなかったので「毒でも、猛毒でもない」とまずは一安心。

一夜の味噌漬けにし、翌日には一切れ全部を食したがそれでも中毒反応はなかったから、「食べられるキノコ」ということはわかった。ただし、また食べたいとは決して思えない味なので、残りの切片は池の鯉へごちそうした。

私には、このように、よく読まれている図鑑やガイドブックには載っていない食毒不明のキノコについ誘われ、何年かに一度、そんなキノコの「試食」をすることがある。念には念をいれてきたつもりだが、もうこんな「冒険」はそろそろやめようかと思っている。

キノコの仲間は、まだわからない種、食毒不明の種があまりにも多くあるという。研究者の方々は、それらの種や食毒の解明に励んでおられるだろうが、その努力には頭が下がる。それに、縄文のはるか昔から、食べられる山菜やキノコを確かめてきた先人の「冒険」にも頭が下がる。その努力のおかげで、我々は野の幸を安心してごちそうになれるのだから。

▼もう一つの余話は、キノコについていたカタツムリの子供たちのこと。写真はサモダシ(ナラタケの仲間)についていた子供カタツムリ。ナメクジもキノコが大好きだが、カタツムリもキノコが大好きなよう。木材を腐朽させるサモダシだが、我々人間だけでなく、いろんな生きものたちの命をささえる役割も果たしているのだ。

ニホンカモシカ棲みつく

夏の間にしょっちゅう目にしていたわが家前河川敷でのニホンカモシカ。

先日、河川敷そばを散歩し休憩していたら、「チャッポン、チャッポン」と水の音が聞こえます。音のするほうを向いたら、わが家そばを流れる小川の中をカモシカがこちらに気づかずにゆっくりと歩いてきた水踏みの足音でした。

体がそんなに大きくありませんから、親離れしてそれほど年数の経たないアオシシ(ニホンカモシカ)でしょうか。カモシカそのものはあまりめずらしいものではありませんが、せせらぎの中に立つ姿はちょっと素敵なのでカメラを向けました。

河川敷は広いので、どうやら夏の間はここに棲み着いていたようです。しょっちゅう目にするカモシカと同じ個体で、あちこちに彼の休み跡も見られます。ここはクマのよく通る道でもあり、今年もふくめて近年はイノシシやニホンジカの棲息跡や時には近くで姿も目にされています。夏の間はヤブが繁っているのでかれらの絶好の住み処、獣道となっているので要注意です。

晩秋・初冬のキノコたち

深山のブナ倒木に発生するナメコに向かいたいのですが、今年はどうも行けそうにありません。

でも、ここは山里の地、それほど遠くに出むかなくても、少々のナメコなら家周りの林でも採る、撮ることができます。晩秋から初冬にかけてのキノコは、ナメラコ(ナメコ)とヤマドリモダシ(クリタケ)、それにムギダゲ(ムキタケ)とコナラ(シモフリシメジ)が代表格。

それに、もう寒気にうながされて冬キノコの本命ユギノシタキノゴ(エノキタケ)もカオを出し始めました。遅出のコガネタケらしい姿も見えます

草むらの中には、食毒不明、食べられるけれども体質によって要注意などのキノコたちも藪がきれいになったのでよく目につくようになりました。

 

藪が開けてきましたので木の実もいよいよ目立つようになり、とりわけウメボドゲ(ツルウメモドキ)はとっても華やかな実をつけ鳥たちを誘っています。

▼きのうは「介護保険制度の改善を求める国への意見書提出」の陳情について、陳情を提出された県社会保障推進協議会の方が説明のため議会へおこしになり、総務教育民生常任委員会の委員長とともに内容をお聞きしました。

今年最後の共同作業

週末4日は、国土交通省成瀬ダム工事事務所長さんをはじめとするみなさんをお迎えして、村議会恒例の行政懇談会を開催予定でした。が、開催するに懸念なことが急きょ生じたため、当日朝になって懇談会は中止としました。

工事事務所側には、この日のために日程を割いていただき、懇談会の後にはダム建設現場にも視察予定の準備をしていただいていたので、申し訳なく思いながら事情をお伝えしました。後に別日程で開催したい旨を所長さんへお願いしたところです。

▼5日から6日にかけては、集落(自治会)の今年最後の共同作業や、自宅の花木の冬囲いに少々手をかけるなど冬を越す準備を始めました。集落のうちわが地区は用水路脇の草刈りと公園の清掃など。

用水路脇の草刈りは、水の流れに支障のないようにするのが目的で、雪国では降雪前に欠かせぬ作業です。

冬支度の遅れているわが家では、薪入れ、家屋や農作業小屋の冬囲い、秋野菜の収穫、池の泥上げなどなど積雪前の作業がまだまだあります。今月は行事などの日程がかなり詰まっているので作業はほぼ無理。「今月いっぱい積雪がありませんように」とお天道様に乞うような日々です。

村発注工事状況の視察

2日は、村発注工事の状況を確認する常任委員会の視察へ同行しました。

通常の視察では、学校や保育園、福祉施設などの視察も行っていたのですが、新型コロナ感染防止を考慮してそれらへの視察は今年もひかえられたものです。

今回の視察先は、豪雪で屋根の一部が損壊した椿川ウルイの牛舎の修繕工事、村道椿2号線改良工事、簡易水道の入道配水池築造工事、村道宮田上林線改良工事、村道菅生田バイパス線舗装工事、定住促進住宅外構工事の6箇所。

このうち、村道菅生田バイパス線は、用地課題もあって長年事業にとりかかれないでいた箇所で、やっと実現の運びとなり舗装も終わりました。関係者の喜びはひとしおと思われます。改良舗装されたことにより、雪のない季節はバイパス側への通行がしやすくなるので交差点の安全確認はより強く求められます。視察後の講評では、事故のないよう、みんなで注意をうながしあう方策の大切さが語られました。

▼きのうは村の社会福祉大会にご案内をいただき、ご挨拶を申し上げる予定でしたが、前日午後、急にやむを得ない事情が生まれ欠席となりました。終わった後ですが、この場から大会の開催を心からお祝い申し上げます。

県文化功労者、地方自治功労者表彰式

きのう朝、宮城県丸森町議会の議員お二人が教育関係の視察で来村され、朝のほんのわずかの時間でしたが、来庁していただきごあいさつを交わし合いました。丸森町議会の議長さんは宮城県町村議会議長会の会長さんでもあります。今年は、すでに宮城県大郷町議会の視察もあり、今月には同じく大衡村議会のみなさんもおこしになる予定です。

この日は、教育関係の視察団がほかにもふたつほどあるということで、小学校では一行のみなさんが合同での視察となったようです。

▼午後は、県の文化功労者、地方自治功労者二つの表彰式で、県町村議会議長会長としてご案内をいただき県庁へ。

今年度の受賞者は文化功労が6名1団体、地方自治功労は14名でした。今回は、わが村の前村長佐々木哲男氏と、わが村議会の鈴木秋雄氏が地方自治功労の受賞となりました。

お二人とは、村政、議会を通じて長年こちらも活動を共にした間柄であり、永年の功労に心からのお祝いを申し上げます。佐竹知事の式辞では、いずれの功労者にたいしてもご本人のご努力とともに、ご家族などのささえにたいする感謝の意がこめられておりました。式典に同席したすべてのみなさんも同じ思いで壇上の受賞の各位を見つめたと思われます。

▼人里は晩秋、深山は初冬の装いとなりました。この季節になると、人里も少しずつ草木の落葉が始まり、散策がてらに目に入るヤブも落葉のすすみで視界がこれまでよりもひらけてきます。

この頃になると、遅く熟した極晩生のアケビの実が熟れていて目に入りやすくなります。昔の童たちは、ヤブがなくなり視界がひらけるこの季節を待ちに待って晩生のアケビやヤマブドウの実をめざしました。アケビもヤマブドウも晩生はとくにおいしいことを童たちはよく知っていたのです。そんな当時を想いおこしながら、美味そうなアケビの実をじっくりとながめました。

ほかの木の実、草の実たちも、鮮やかな色に染まって「おいでおいで、私はここよ!」と小鳥たちを呼んでいるように見えます。秋って、ほんとに美しい季節なんですね。

はじめて見たミョウガの実

過ぎた週末、花木まわりの草を片付けていた妻が「ええモノをめぇへるがら、きてみれ(いいものを見せるから、来て)」とこちらを呼びます。なんだと思ったら、それはミョウガの花が終わった跡についている真っ赤な実のようなもの。こちらははじめて見る「奇怪な姿」なのでしらべて見たら、それはやっぱりミョウガの実らしい。

片付けしごとをしているといろんな出会いがあるようで、ミョウガの実につづいて妻は「ほら、こどしも(今年も)、でだよ(出たよ)」と声をあげました。花壇の中に、なるほどハタケシメジが昨年と同じようにいっぱいカオをだしています。

家周りでは、ほかの草むらの中にも遅出のハタケシメジやサモダシ(ナラタケの仲間)が最後のカオ出しを見せてくれています。枯れ立木には大きく生長したトヂナメラコ(ヌメリスギタケモドキ)の株も見えます。

いろんな出会いや発見がある晩秋。遅咲きのオミナエシが澄んだ陽射しに輝き、温度計が氷点下を刻むようになったら、鉢植えのサザンカやダイモンジソウは花姿をひときわ目立たせるようになっています。

同じ過ぎた週末、合居川「いずくら」の崖紅葉も見頃を少し過ぎ、谷入り口のブナも黄葉が色あせていました。渓谷奥のブナ林はもう葉っぱをすっかり落とし初冬の様相です。

▼紅葉の見頃時期もふくめ秋の訪れがやや遅く感じた今年。一時「今年は不作かな?」と思っていたキノコのサモダシ(ナラタケの仲間)が、10月末ぎりぎりになっていっせいにカオを出してくれました。

わが家周りの草むらでも、倒れた枯れ木や埋もれた腐朽木に平年並みの発生を見せています。やはり今年は、9月から10月のやや高めの気温がキノコたちの発生を遅らせたようです。おかげで、サモダシの塩漬けも充分に確保でき、今年もサモダシがたっぷりと入った納豆汁を楽しめそうです。

第55回東成瀬村産業祭

里山にやや遅れて紅葉盛りが下りてきた10月末、55回目を数える村の産業祭「なるせ物産まつり」が28日夜から29日正午にかけ開催されました。

新型コロナ禍がつづく社会なので、祭りにつきものの出品物への表彰式や「食の場提供」などは無しでの開催です。

そのため「まつり」の雰囲気はコロナ前とは少々ちがいます。でも、農産物や加工品、民芸品など出品物は昨年より多かったようで、それこそ丹精こめた品々に参観者は「たいしたもんだ」「えぐ、つぐるもんだ(よく、つくるものだ)」と感嘆の声をあげながら見入っていました。受賞されたみなさん、おめでとうございます。

時は収穫の秋たけなわ。産業祭への出品物も豊富ですし、村の直売所も野菜やキノコなどで一年のうちで陳列棚がもっともにぎわう季節です。食の豊かな秋は、ほんとにうれしい、楽しい季節ですね。

▼28日は、秋田県南市町村議会議長連絡協議会の設立総会で大仙市へ。沿岸部から内陸まで、県南9市町村の議会議長によってつくられる組織で、今後は、互いに情報交換を密にして連携をより強めることを確認しあいました。

▼会議を終えての帰途、須川高原栗駒神社付近で入山したキノコ採り遭難発生との報に触れました。遭難救助隊の幹部さんからも電話が入っていましたが、会議中だったので通話はできず。帰宅して夜遅く確認したらやはり29日朝の出動要請でしたが、ほぼ必要員数が確保できたようなのでこの日の任務には加わりませんでした。

遭難されたのは80歳の湯沢市の女性。夜の高原は氷点下近い温度だったはずで、低体温症など命の危険が心配されましたが、翌29日午後、元気で歩いているところを救助隊員によって無事発見されたとのことです。

春のタケノコ採り時期の遭難と違い、この季節の山岳遭難は夜になれば冬と同じような寒気に襲われますから危険です。過去、晩秋から初冬の時期の遭難者の死亡例を救助隊員として目にし搬送を体験しているだけに、この季節の山の怖さを隊員たちも私もよく知っています。地理不案内の箇所には足をむけない、これが鉄則です。

大好きなクリフウセンタケ、そしてムキタケ

きのうのホンシメジと同じように、やはり「今年は出ないのか?」と思っていたクリフウセンタケ。過ぎた同じ日曜日、「これが3度目」と通ったらもう過ぎる寸前の状態になっていました。今年は、ホンシメジと同じでクリフウセンタケも発生がやや遅れたようです。

ニセアブセシメジの名もあるクリフウセンタケ。いろんな毒キノコや猛毒キノコと間違われやすいこともあってか、村や集落では採る方がほとんどいないキノコです。でも、むかし集落でキノコに詳しくハギミ(山菜・キノコ採り生業の方)だったわが家となりのTお婆さんは、「これは、クリカラモダシ、んめぇ(旨い)キノゴだよ」と教えてくれました。

Tさんのおっしゃった通りで、フウセンタケ特有のしゃきしゃき噛みごたえとやや甘さのある旨味がすばらしく、私は大好きなキノコの5本の指のひとつにこのキノコをあげます。

クリフウセンタケは比較的ボリュウムもあり、菌列をつくって発生するので量も多く採れ、それもキノコ通の人気をあつめる理由のひとつ。別名「ごんどかぶり、枝かぶり(ごんどはゴミ類という意味。この場合は木の枯れ葉などを指す)」ともいわれ、名のように枯れ葉や枯れ柴などを傘に載せたまま持ち上げて生えているのもこのキノコの特徴です。

柄はやや太く、白くて長いので、きのうのホンシメジと同じように折らないように指を突き刺してソッと抜き取ります。柄が長い分、食べ応えも大きいというわけです。クセがなく採れる量も多いので、和洋中華と様々な料理でたっぷりとごちそうになれます。

特徴のあるキノコですから、採り慣れ、食べ慣れている方ならまったく心配いりませんが、そういう体験のない方だと、似ている猛毒や毒キノコと間違える心配もあります。わからないのは採らない、食べないがキノコ食の鉄則。その点は充分にご注意を。

▼里山から深山まで晩秋から初冬に見られるムギダゲ(ムキタケ)もいっせいにカオ出しです。写真はわが家そばの里山で、ナラ枯れのミズナラに大発生したムキタケです。

村内では、ナラ枯れに侵された立ち枯れ木に大量のムキタケやナメコが発生する「珍現象」が数年前からひろく見られます。これは全国的な現象のよう。それでキノコをいただけるのはありがたいものの、広範な林が無残に枯れ、それにより樹木と共生するシメジやホウキタケ、シシタケなどの発生環境が壊れるので、「きのこ採り・撮り人」は複雑な心境におかれます。ムキタケやナメコは比較的簡単に採れますが、前述のシメジたちは発生箇所がきわめて限られますから。ナラ枯れは、そういう意味からも困ったものです。

▼きのう午後は東北中央自動車道の新庄・湯沢間建設促進フォーラムへ出席。湯沢商工会議所が主幹の集いです。地域振興に関する講演につづき、意見発表、大会決議などで建設の重要性がうったえられました。山形からも多くの関係者が参加されました。