キノコ余話

名前も、食べられるのか、それとも毒なのかまったくわからないが、どうも気になり「試食してみようか」という欲望にかられるキノコとの出会いがこちらにはある。

そんな「気になるキノコ」を今年も二つの種で目にした。一つはまず試食を避けたものの、もう一つの種は、昨年も見かけて気になっていたキノコなので「よし、今年は、試食してみよう!」と思いを実行に移した。

それが、写真のキノコである。手といっしょに撮ったので大きさはほぼわかるだろうが、昨年もたった一本だけ、今年もたった一本だけ、ミズナラ林の地面に出ていたキノコである。おそらく木の根と共生する菌類の仲間と思われる。

採取して生のまま少し口に含み噛んでみたが、苦みとか特徴のある味はない。ただ、ややくせのある香りはある。まず湯がいてもらい、刺身風にしてもらった。肉厚でいかにも美味そうな一切れのうちのさらにその5分の1ばかりを口に含んだ。味はまあまあだが、湯がいたら、香りというよりも嫌な臭いといったほうがよい臭さが気になり、箸はあんまり進まない。ただ、食後に体への中毒反応はおきなかったので「毒でも、猛毒でもない」とまずは一安心。

一夜の味噌漬けにし、翌日には一切れ全部を食したがそれでも中毒反応はなかったから、「食べられるキノコ」ということはわかった。ただし、また食べたいとは決して思えない味なので、残りの切片は池の鯉へごちそうした。

私には、このように、よく読まれている図鑑やガイドブックには載っていない食毒不明のキノコについ誘われ、何年かに一度、そんなキノコの「試食」をすることがある。念には念をいれてきたつもりだが、もうこんな「冒険」はそろそろやめようかと思っている。

キノコの仲間は、まだわからない種、食毒不明の種があまりにも多くあるという。研究者の方々は、それらの種や食毒の解明に励んでおられるだろうが、その努力には頭が下がる。それに、縄文のはるか昔から、食べられる山菜やキノコを確かめてきた先人の「冒険」にも頭が下がる。その努力のおかげで、我々は野の幸を安心してごちそうになれるのだから。

▼もう一つの余話は、キノコについていたカタツムリの子供たちのこと。写真はサモダシ(ナラタケの仲間)についていた子供カタツムリ。ナメクジもキノコが大好きだが、カタツムリもキノコが大好きなよう。木材を腐朽させるサモダシだが、我々人間だけでなく、いろんな生きものたちの命をささえる役割も果たしているのだ。