紅葉の焼石岳だより(その2)

10月なのに、標高1547.9㍍の焼石岳山頂でも真夏を思わせるようなお天気です。

頂上には、東成瀬側コースをこちらの先になって登ってこられた先行の男性お一人だけ。ごあいさつをしておたずねしたら、「石巻市から」という方でした。

寒くないので頂上の西側に腰を下ろします。「南の森」と、南裾の大岩沢、小岩沢のカッチ(最上流部)の紅黄葉、それに胆沢川の南に沿う仙北街道(手倉越え)ルート筋の尾根などをそのまましばらく眺め続けます。みな、若い頃に春山の残雪歩きをした山や谷です。近くの栗駒山、遠くの鳥海山、岩手山はモヤにかすんでいてわずかに輪郭がわかるだけ。そういう案配ですから、さらに遠い月山などは晴れなのに山のかたちもわかりません。

期待していた、胆沢平野の田んぼと散居集落の美しい風景も、直下なのにやはりモヤに霞んで写真に撮るような景色はみられません。運がよければ、稲田、集落、防風用の屋敷林「えぐね」が調和してつくりあげるすばらしい景色が初夏も秋も眼下にのぞめるのです。

まだ10時前でお昼にはあまりに早く、そのまま岩手側コースへ下り姥石平を迂回するいつもの行程をとります。下り始めたら、岩手側を登ってくるご夫婦らしい何組かと行き会いました。秋田側への下りでも、やはりご夫婦と思われる2組と行き会いました。そういう時は「夫婦で、登れるなんて、いいもんだなァ」とつい思ってしまいます。

でも、高齢者一人での歩きの方とも時々出会いますから、その時は、「オレのような方もいるんだな」と思い、それでご夫婦登山のみなさんへのちょっぴりのうらやましさは相殺されたりもします。こちらも若い頃は、妻と子どもも連れて焼石に共にのぼったのですが、今は妻の足や体が丈夫でないので、いっしょの山行きは無理となっています。

さて、その後の歩きでは、遅咲きのハクサンイチゲやシロバナトウウチソウ、ハクサンシャジンをながめ、姥石平へ。途中、雪解けの遅い泉水沼の周囲ほんの一部には焼石らしい紅葉がかろうじて残っていました。南本内川最上流部のシゲイシのカッチも残雪が遅くまである所なので、そこも草紅葉をはじめなんとか紅黄葉らしい景色がながめられました。

この日最後に期待していた神社東側のもっとも美しい紅葉景色もやはり落葉や色褪せが進み見頃は過ぎています。色づき真っ盛りなら、ハイマツの緑と岩肌に映えるカエデやツツジ、サラサドウダンなどの紅や黄色は、まさに自然がつくる大庭園の秋景色を彩る所です。ここの錦模様は多くのみなさんにご紹介したい、私にとっては横岳、南の森とともに焼石の絶景の紅葉ポイントなのです。

やや過ぎ具合の紅葉を眺めてからは、「あとは用無し」でどんどん下がります。いつものようにタゲ(焼石)のすゞ(湧き水)に浸しておいた梨を口にし、家族への土産に湧き水をペットボトル3本に詰め、車到着は1時。まずまずなんとか満足の山行きとなりました。