ムゲ山(向山)

日曜の朝、思わぬ陽射しがあったので成瀬川の岸辺に立ち寄りました。

その日の朝は除雪車出動なし。真冬日が続いていたので2日ほどまた降り積もった新雪も軽く雪原は歩きやすい状態です。その歩きやすさと陽射しについ誘われ、急きょ9時過ぎ、自宅前の「ムゲ山」に上がりました。

歩き始めてすぐに杉林の中で目にしたのは、何かの鳥がタカの仲間の猛禽類に襲われた跡。雪上に小羽がちらばっています。今々襲われた様子で、羽には新しい血と肉片の着いているのもあります。羽の大きさや様子からして狙われたのはカケスでしょうか。

ムゲ山の稜線は北西の風当たりが強く、ここにはいつも大きなダシ(雪庇)ができます。そのダシは、自重に耐えきれず崩れ落ちるまで塊となって膨らみ続けます。最短距離で稜線に上がるにはダシの切れ目を選んで通ります。ダシにおさえられている樹木をみれば、雪の厚さは4㍍以上。ダシの越え所はどこか?その時に役に立つのは動物の足跡。この日はノウサギが上り越えた足跡を見つけ、それを目印にたどってダシの上に上がりました。

ムゲ山のうち大きなヒラ(底雪崩)が毎年落ちるキノギッピラは、樹木が少なくわが集落を眼下にのぞむのに都合のよい所。ここまで上がればキノギッピラの頂部に行き、そこからまたダシの切れ目を選んで斜面に下り、集落の一部を望むのがお定まりのコースです。

ここのヒラ(底雪崩)は今年はまだ落ちていなくて、ひび割れができはじめています。昨年春は例年より大きなヒラが落ちた大斜面です。ひび割れの1㍍ほど上まで刺激しないよう静かに下りて止まり、まずは冬の集落をながめ、朝に立ち寄った川筋も見下ろしました。(13日の集落は積雪2.5㍍前後、今年もそれと同じような大雪崩が落ちるでしょう。)

ダシの上では手のとどく高さにあるヤドリギの緑と、小鳥たちの食べ残したその木の実が目に入ります。雪の世界の生きものたちと人にとっては、わずかな緑も、わずかな木の実もありがたしです。ノウサギが好物のコサバラ(コシアブラ)の樹皮を食べた跡も随所に。


集落をながめた後にはまた稜線に上がり、ダシの根元で危なくない箇所を選んで椿川方面がのぞめる尾根に向かいます。一部には崩落したり落ちる寸前のダシもあります。稜線の一箇所だけ、積雪ゼロ、ダシ(雪庇)もできずに土肌が見えます。ここは強烈な風の通り道で雪がすべてとばされてしまう所。こういう所は、数ある冬山歩きの中でもめったに見られません。常に風の強い地形が、こういう積雪ゼロのめずらしい様をつくるのでしょう。

期待した陽射しはすぐに隠されてしまい、手がかじかむほどに真冬日の雪が舞うお天気になりました。今年の私の冬山歩きはどうもお天気にあまり恵まれません。椿川方面の真冬の集落の様子を眼下に、連休の滑りを楽しむスキー場方面の人々を真正面に眺めて、すたこらさっさと下りへ。こんな歩きやすい雪の里山でも2時間ほどを要しました。