なんと美しい寒中のヤマドリ

きのう記した八卦沢の冬の景色をまず最初に。Kさんがつくり続ける農地もここだと1㍍50㌢近い積雪の下になっています。

大寒をはさむきのう朝まで一週間ほど、降雪がゼロだったりわずか数㌢だったりで、朝の雪寄せをしなくて済む日が続きました。

すでに積もっていた1㍍50㌢近い雪も、晴天や雨、放射冷却などで次第に締まり、春の堅雪渡りのように雪上をキャンジギ(カンジキ)なしで楽に歩ける日が幾日もありました。

そんな堅雪の上にふわりと3㌢ほどの新雪が降った22日の朝、曇り空ですが、生きものたちの足跡がよく見え、しかも樹木の枝に雪がほとんど着いていませんから雪上の足跡が午後になっても消えずに残っています。こういう日は、生きものたちを追跡するにはまたとない機会、ひと冬にほんの数えるほどしかこんな条件の日はやってきません。しかも、足が雪に沈まないめずらしい寒中の堅雪です。役場の所用を済ませてから「これは、またとない日、山行きだ」と急きょ決め食料をバタバタと詰め裏山へ2時間ほどむかいました。

カンジキなしでも歩けますが、時にズボッとぬかることもありますのでとりあえず履いて歩き開始。Kさんのたんぼがある沢をスタスタと登ります。

予想したように雪上は、イタチ、ノウサギ、キツネ、テン、リス、アオシシ(マッカとも言うカモシカのこと)、ヤマドリたちの足跡があちらにもこちらにもいっぱい。

沢の上流部にたどり着いたら、朝に杉林から出てきて沢に入ったヤマドリの足跡が目に入りました。沢の流れは所々が積雪でふさがれていて、穴のあいている箇所からヤマドリは入り、流れのたもとで青草や小石などをついばんでいるのでしょう。入った穴の箇所よりほかの穴には足跡が見えませんから、もし飛び去った後でないとすればヤマドリは足下の沢にまだいるはずです。

カメラを構え、息を止めて、穴の空いている沢の流れに足で雪を落としてみました。が、気配はありません。「やはり、朝の食事を終えて飛び去った後か」と思い、いま一度雪を蹴落とした瞬間、前方10㍍ほどに空いている別の穴から雪の上にひょいとヤマドリが頭を出しました。沢にできた雪のトンネルをくぐっての食事中、こちらに気づいたのです。

よく、ドドドーッの羽ばたき音で瞬間に飛ばなかったもの。これ幸いとまずはその頭にカメラをむけ、ありがたいことにすぐには飛ばずに今度は雪上に全身をみせて数歩走りはじめましたので、またシャッターを押し、最後の飛翔は、あまり早くてよくとらえることができませんでしたが、再生してみたらかろうじて羽をひろげた瞬間が一部写っていました。寒中、雪上のオスヤマドリ。狩猟時や、じっと隠れて待っていての生きもの撮影なら簡単な写しでしょうが、ただ歩いていてのこんなカメラ目線出会いはなかなかないのです。