花の百名山、盛夏の焼石岳山行(その2)

花の百名山を世に知らしめた高原の広き花園・姥石平を迂回し、夏の花の代表格タカネツリガネニンジンの花ロードを進む。一休み予定のスゲイシ(南本内川最上流域)まできたら、なんと雲海から頭を出した岩手山、早池峰山が遠望できた。

これにご来光があれば今回の山行の願いは果たせたのだが、陽はもう高く昇り、時すでに遅し。「もしかしたら頂上まで行かずここで待てば、ガスがなく目的のご来光が望めたかも?」などと語り合ったが、今となってはなんともならず。雲海はやはり今朝もあったのだと思うと、一時消えかけていた悔しさがまた募ってきた。「あ~あ、残念無念」である。

ただ、雪渓上部からの雲海とご来光を望めるこの場所は撮影にはなかなかよいポイントであることを確認できた。これは今後に向けてひとつの収穫となった。雪渓-雲海-岩手山-早池峰山-ご来光、ここはそんな写真を撮れるまたとない絶景地点となるかも。

花が終わり伸びた花柱が羽毛のように美しいチングルマ。キンコウカやタチギボウシの群落を過ぎ、9合目南本内分岐でまたゆっくりと休む。焼石神社へ参拝しながら咲き始めのミヤマリンドウを撮る。

今年とりわけ残雪の多い鳥海山を真西にのぞみ、タカネナデシコなどを愛でつつ下る。途中、人の背丈をはるかに越す迫力のサグ(ミヤマシシウド)が、まるで花火のような花をつける中を過ぎ、イワテトウキの高貴な香りと花、チシマフウロ、トウゲブキ、キオン、マルバダケブキなどを左右にながめて再び焼石沼の岸辺へ。

ここの草原には南限種ともいわれるエゾクサイチゴの実が熟し始めていて、高原のイチゴをゆっくりとごちそうになり沼岸で一服。サンカヨウのほんわかと甘い実も口に含む。沼では大きなイワナが岸辺近くを悠々と泳いでいる。

登る時タゲ(岳)のすゞ(湧水)に浸しておいた桃太郎トマトと一夜漬けのキュウリは、手を3秒間以上は浸していられぬほど冷たい清水に冷やされている。それを囓り活力をつけてあとは一路黙々と下山のみ。

途中、登山道のぬかるみ整備のために上ってきた作業の方々と出会い、「ご苦労さん」とご挨拶。そのご一行のうちのSさんは、今回の夜行登山にお誘いしたうちのお一人。行き会ったSさんからの開口一番は「ご来光、えがったべ」であったが、あいにくの残念無念を告げた。なので、またの機会を暗黙のうちに確かめ合ったような気分にこちらはなった。

車到着11:35分。駐車場は関東ナンバーも含めほぼ満杯。花の百名山はやはり人気がある。単独、男女のお二人連れ、あるいは家族らしい3人連れなどの人々と復路ではすれ違った。タクシーで登山道まで来られたというやや高齢の東京の方もおられた。こちらは術後の体調をやや心配したがだいじょうぶ。健康体を再確認できた貴重な山行でもあった。