花の百名山、盛夏の焼石岳(その1)

29日、自宅前から夜10時少し過ぎに出て、秋田側登山道始点の駐車場に着き歩き始めが午後10:37分頃。車道では獣の姿は目に入らず。月光はほとんどなく満天の星空だ。

クマや最近出没するようになったイノシシのこともあり、お互い突然の出会いを避けるために時々「オーッ、ホーッ」などの声を上げながら歩く。こちらは、術後の体調にほんのちょっぴり心配もあり歩きはややゆっくりとする。

林を明るくしてくれるような月光はないので、ヘッドランプと懐中電灯の明かりを頼りに、時に語り、時に黙々と歩く。ブナの樹間からこれから向かう東方面の空に星が光る。いちばん大きく輝くやや赤い星は「惑星だろうか」などと思いながら歩く。

8合目手前の「タゲのすゞ」(すゞは湧き水の意)に桃太郎トマトとキュウリの一夜漬けを浸す。いつもの山行のように帰りの元気づけとしていただくための活力材だ。

沼に到着深夜12:55分。星空がとっても素敵。岸辺で少し休み、頂上に向かう。登山道はつい先日に草木が刈り払われたばかりで歩きやすい。9合目分岐に午前1:33分着。

やはり星空を満喫する。ここからは東焼石岳・夏油コース方面に入るため姥石平に向かう。いつもとは逆のコースどりをしたのは、夜の岩越えが危ないことを何度も体験していて、もうこちらは高齢者なので「危ない夜の岩道は避ける」こととしたため。その分歩く時間を多く要するが、ご来光までの時間をたっぷりとっていたので急がず登る。

9合目からの迂回コース登山道は刈り払いがされておらず、道に草が覆い被さり足下のよく見えない箇所が多い。夜だとなおさら見えず危ない。それに草木の夜露でズボンも靴も靴下も濡れてびっしょり。初めから雨具をつければよかったが、「気温がそれほど低くないので」と油断してしまった。こちら側登山道の刈り払いも早くとりかかってほしいもの。

頂上着は翌30日、午前2:43分。まずは靴をぬいで靴下の濡れをしぼり、肌着を着替える。これまでの夜行登山時とちがい気温はそれほど低くない。しかし、そうしているうちに空模様がだんだんおかしくなり、星がひとつも見えなくなった。西からの風に流された濃いガス(霧)にまわりはすべて覆われてしまう。「さあ残念、4:30分の日の出までにガスがなくなればいいが」と、祈るような心で待つ。しかしガスは晴れない。だが「写せる準備だけはしておこう」と、二人とも、早池峰山方面のやや南から出るご来光に向けて三脚にカメラをセット。待つ、待つ、待つ。真っ暗闇の花ふたつはその時の写真。

結局、ガスはまったく晴れず、ご来光は望めずに終わり。それでも、雲海などを期待して頂上で2時間ほど粘ったがダメ。仕方なく頂上夜明けの花々をながめ、朝食を軽くとり、やむなく来た道を下山だ。あとは姥石平の花々をながめる楽しみに気持ちを切り換え、花の百名山の夏を写し、スゲイシ(南本内川最上流域の雪渓のそば)でゆっくりと一服だ。