昔のソリ引きを想う里山歩き

まだ2㍍前後の積雪がありながらも、雪下ろしはやらなくてよくなった季節入りです。

きのうは、役場で用務を果たしての後、生活用水の取水口点検がてら気分転換を兼ね、自宅後ろの里山を3時間ほど歩きました。

歩いたのは集落でもっとも大きな沢、岩井沢流域。この沢は流域がやや広くて林が多く、むかしから杉やブナなどのソリによる搬出がよく行われていたところです。

中学校を卒業して直後の今から50数年前には、こちらもそのソリ運材にはじめて携わった沢です。深山のブナ材の搬出で利用されるソリは、急斜面を自重で滑り降りるバチゾリと、平坦部の搬出ではソリに食用油を塗った大ゾリが使われます。危険だし重労働なのでその作業に就くのは男だけ。

しかし里山の搬出で使われるソリは、田んぼへの堆肥運搬などでもつかわれたカナジョリ(カナゾリ)です。そのカナゾリ引きの主役は集落の女性(アバ)たち。カナゾリは、文字通り滑り面に鉄が打たれているので「カナゾリ」。主に緩やかな勾配の雪道をつくり、荷の重さと人の引き力で微妙に雪道を下ります。道があまり平坦だと全力を振り絞って引かなければソリは動かず、時にはソリが止まってしまい仲間から応援を受けたり、稀に荷を下ろすことも。

反対に、道の勾配がややきつい所では、荷を積んだソリが暴走しがちなので、「うまっこ」と呼ぶブレーキ用の材木などを雪道に接するように取り付けたり、「マッカテゴ」と呼ぶブレーキ装置をソリの前部に据えて急坂を下ったものです。アバたちもふくめ私らが作業の時は、それらの装置などつけずに、体をありったけ斜めにして両足を雪面につけ、ソリを押さえ、全身でブレーキをかけながらソリと下ったもの。今想えばかなり危ない作業でした。

この沢を歩くと、50数年前、集落のその女性たち(現在90歳前後の方々ですから、当時は40歳代前後のアバたち)と混じって、みんなで汗を光らせ、語り合い、笑い合って杉材引きをしたことが鮮明に頭にうかびます。記憶はありませんが、この沢を、一日、4回前後は往復したのでしょう。カンジキ跡のある雪上は、その時とほぼ同じ風景です。

その当時に伐られた杉の跡地にまた杉が植林されましたが、その杉ももう抱きまわされないほど太くなりました。そんな杉を見て、当時から経た年月の長さを偲びます。50数年も経てば、厳しい雪国でも樹木はこんなに生長するのですね。

さてきのうのことです。郡境まで上がれば里山といってもかなりの標高となりますが、きのうは雪がやや深くて上まではムリ。雪崩箇所に気をはらいながら、時に上をよく見て、時に急ぎ足で斜面を横切り、沢の源流部となる8分目ほどまで上がりました。今回は入道・菅ノ又方面まで足を伸ばし矢櫃方面を経由して帰宅です。

里山といっても中腹まで上がれば雪はまだ2㍍をはるかに越えています。厚い雪に押さえられながらもしなり強く生きるユキツバキの常緑が雪の白さに映えます。

杉にからまったフジと杉の幹の妙に目をやったり、太いサルナシの蔦に見ほれたりしながらの歩きで、残念ながら、森の生きものとくに期待していたノウサギとのご対面はゼロの歩きとなりました。今はノウサギの繁殖行動期となりオスとメスがともに行動した足跡が雪につく季節ですが、足跡はごくわずか。この地ではノウサギは激減しています。

▼7日で締め切られた一般質問の通告。今会議では3名の議員が質問に立ちます。