深山の幸を締めくくるキノコたち(その2)

ナメコは原生のブナの森にいちばんお似合いのキノコ。まだ顔を出さない晩生のナメコは新雪が降る中でも生長を続け、根雪の季節まで採取を楽しむことができます。真冬の山歩きでも、カチンカチンに凍ったナメコを雪の中で見かけることがよくあります。

今回の主役はナメコですが、そのそばには、遅れて出たカノガ(ブナハリタケ)や、味噌汁、うどんなどの出汁用にされるジェンコシナダゲ(オツネンタケモドキ)の姿も見られました。

ブナとミズナラの森には、いつもなら敷き詰められたように落ちているシダミ(ドングリ)はほとんど見られず、ブナグリ(ブナの実)も今年は凶作に近い不作でほとんど無し。クマたちがそれらの実を食べた跡がいっぱい残るのが今の時期の樹下なのですが、地面にはそんな活動の跡はほんのわずかしか見られません。

季節の常で、ひととき水の量が減った渓谷も元の勢いある流れに戻りました。帰りにも、また「いずくら」の紅葉に立ち寄り、朝とはちがう雰囲気の錦模様を目にとめました。

▼昨日付の秋田魁紙「声の十字路」欄。秋田市にお住まいのMさん(女性の方)が、わが村を経由して栗駒の紅葉(須川高原)観賞へ向かう途中で岩井川の「農村公園じょうか」のトイレを利用したときの感想が記されておりました。

朝にごたごたと忙しさもあり、きのうに限って新聞を読む時間がいつもと変わり、ほとんとが見出し読みのままでいて、朝に新聞を読んだ時はその記事に気づきませんでした。そうして所用を果たしていての午前にたまたま横手市増田町に住む友人から「城下公園のトイレの記事が載っているよ」という旨を電話で告げられ、急いで紙面を開きなおしたという次第。

さて、「声欄」記事の主な内容は、「洗面台や便器が清潔なこと、手を拭く紙や消毒液など必要なものがすべて整っていたこと、折り鶴や花が飾られていたこと。」などをあげられ、管理している方の気配りが随所に感じられ、同行の女性の方とともに、トイレのきれいさ、管理内容に「思わず声をあげてしまった。」という筋でした。

公園のトイレ管理・掃除は、村から委託されている近所のSさん(女性の方)が担っているもので、その管理のていねいさ、気配り感覚、美的センスには私どもも感心していたものです。「ていねいに、ほんとによくやっていただいている。ありがたい。」と日頃から感謝の思いでいたところでした。

村管理のこの公衆トイレは、二つの国道の分岐そばにあり、我が家真ん前ですので利用される方々がとても多いことを常に目にしていてわかります。このトイレをふくめ、利用者の多い少ないにかかわらず公衆トイレはいわばひとつの「むらの顔」でもあります。

「日本でもっとも美しい村」連合の一員であるわが村です。自然景観の美とともに、ごくふつうのくらしの中でのそうした清潔への心がけ、村を訪れる方々への気配りがこうして評されたことを、村民の一人としてとてもうれしく思いました。

投稿していただいたMさんにお礼を申し上げますとともに、トイレ管理に尽力されているSさんにも、あらためて感謝の心をおくりたいと思います。ほかの公衆トイレ管理につとめておられるみなさんにもあわせて感謝です。

深山の幸を締めくくるキノコたち(その1)

10月もあとわずか。山間集落への降雪予報も聞かれるようになりましたので、今シーズン最後、ブナの森を写しがてら、深山の幸たちと出会いに向かいました。

向かった先は合居川渓谷。役場などで朝に所用をいくつか果たし、お天気がよいのでゆっくりと家を出発。まずは「いずくら」の紅葉をながめに立ち止まりです。天候にもよるでしょうが、紅葉の真っ盛り期間といえるのはほぼ一週間ほど。色づきが最も華麗なのは4~5日ほどでした。それでも、まだ「いずくら」らしい断崖紅葉の見頃は続いています。

渓谷のブナの森は、県境部ですでに落葉がほとんど終わり、それより少し下がってこちらが歩いた森で落ち葉のシーズン入りというところ。

この渓谷に昔からあった山道はすべて廃れていて、深山入りはいずこへ入るにも沢を何度も何度も渉り、時には滝をのぼります。やがて渓谷深くに広大なブナの森がひろがります。そこは、決まって私が歩を止め一呼吸つく場所。ブナ大樹のそばには、昔のハギミ(山菜、キノコ採りを生業とした人々)の方々が歩いた山道の跡がわずかにのこっていて、往時の人々の山入の姿をしのぶ林でもあるのです。

さらに渓谷の上流部をめざします。この日、出会いを期待したのは、何年もの間楽しませていただいているナメラコ(ナメコ)たち。

そのナメコと出会う前に目に入ったのは、味の良さで評判のブナシラダゲ(ブナシメジ)、そしてナメコとならんで晩秋の味覚の代表ムギダゲ(ムキタケ)も。さらに同じ晩秋の花形ヤマドリモダシ(クリタケ)も枯れた樹の根元に美しい姿で群生していました。

肝心カナメのナメコは、毎年いただいている倒木のほとんどすべてに、いい形で撮り頃(採り頃)、食べ頃の色に輝いていました。東北のキノコ愛好者たちのなかでは常に人気上位の位置にあるとされる天然ナメコ。原生の森と、そこで出会った今シーズン最後の山の幸、森の宝たちを、2回に分けてご紹介です。

 

冬囲い始める

これからは、県境峠越えの道路に積雪がいつあってもおかしくない季節。栗駒国定公園の山々で落葉がほぼ終わるそんな季節になれば、村の人々は少しずつ冬支度を始めます。

我が家も、住家をはじめ一部農作業小屋の冬囲いをきのうはじめました。秋野菜の収穫や鯉を放している雪消し池の掃除などがあって作業小屋への出入りがあり、すべての建物を冬囲いで閉じることはまだできませんが、まもなくの降雪を思えば「天気のよいやれる時に一つずつ仕事を済ませておかねば」という訳です。

そんな作業をしながら家のまわりでふとヤブをみたら、晩生のアケビの実がおいしそうに熟れてまだ口を開かずに生っていました。晩秋のアケビの実を見ると、自分が小学生の頃、近所の遊び仲間たちと休日にアケビ採りやヤマブドウ採りに向かった頃を思い出します。

草木の葉が落ち始めると林や藪の中がすっきりし、遅くに実を熟したアケビは遠くからもよく見えたもの。晩生のアケビは甘みがすこぶる濃く、昔の童たちにとっても人気があったもの。この時期になるとヤマブドウもよく熟れて甘みがいっそう増し、これも童たちはよくめざしたものです。秋たけなわも山へ、ヤブの中へ。晩秋はもっと盛んに山へ、ヤブの中へが昔の私らの一日でした。

家のまわりの藪の中にもうひとつ目に入ったのは、腐った樹の根元に出ていたモッコラモダシ(ナラタケの仲間)。ナラタケの仲間ではもっとも粘りが少なく、味もほかのナラタケ仲間よりやや落ちますが、ひとつの根元で大量に採れることから人気のあるキノコです。

この株はもう老菌の域に入っていますが、それでもモッコラモダシ特有の黄色で、一箇所大量発生の典型的な姿はまだ保たれています。早速、おでんの具や味噌汁で歯ごたえのある食感を楽しみました。

晩秋のキノコたちもお出まし

標高の高い県境の尾根やその裾では、ブナの落葉がほとんど終わりに近づきました。

深山は初冬、里山は晩秋の気配が色濃くなると、シーズンの幕引き役をつとめるキノコたちが次々と顔を見せます。

我が家のまわりで新しく顔を見せ始めたのはまず倒木に出るナメラコ(ナメコ)。そして立ち枯れ柳にはトヂナメラコ(栃ナメコ・ヌメリスギタケの仲間)。

排水のよい地面には、通には高級扱いされるコナラ(シモフリシメジ)が早くもお出ましです。このシモフリシメジ、我が家では「すまし餅(雑煮)に最適のキノコ」として、特有の品の高い香りと味を楽しみます。

本日終わりのご紹介はユギノシタキノゴ(エノキタケ)。エノキタケは、晩生のサモダシ(ナラタケ)やナメコ、ヤマドリモダシ(クリタケ)、ムキタケ、シモフリシメジとともに根雪の季節まで我が家の食卓に並び続け、家族の健康維持に貢献してくれるでしょう。

新型コロナ予防で異例の産業祭

第53回目の村産業祭・なるせ物産まつりが23日夕~24日正午にかけて行われました。

全国的に新型コロナ感染症が収束を見せない中での催しなので、あらゆる面で感染症予防対策が心がけられました。参観入場者のマスク着用はもちろんのこと、検温や出入り通路の隔て、会場内での食事出店や各物産販売は中止、あるいは制約。展示出品物受賞者への表彰式も今回は行わず、抽選会やJAによる恒例の餅まきもなし。なので会場は物静か、過去に例のない産業祭となりました。

そんな雰囲気にもかかわらず、丹精込めてつくられた農林産物や加工品、民芸品は例年どおり展示され、おとずれた方々は「一等賞」をはじめすぐれた産品の前で立ち止まり「たいしたもんだ!」と語り合っていました。恒例の小5年生たちによるお菓子販売などの出店はあり、児童たちは元気に役目を果たしていました。

会場には、滝ノ沢地区・上掵から発掘された縄文遺跡の土器や、生涯学習教室の作品、村の写真コンクールの入賞作品や写真愛好グループの作品なども展示されました。

▼里山の黄・紅葉が見頃となりました。同じように、わが集落からいくらも離れず、部落の入会林と尾根を隔てて表裏をなす合居川渓谷「天正の滝」とその下流部「いずくら」の紅葉も今が真っ盛りです。

これから色づきが増す樹あり、早くも落葉する樹ありと、渓谷の木々の色づき変化は激しく、日毎どころか、一日のうちの朝、昼、夕と色景色は微妙に違いを見せます。それに雨や陽射しのちがい、霧の有無などお天気具合も加わりますから、渓谷の彩りは七変化のように錦模様を替えます。

「天正の滝」、「いずくら」の紅葉は、気軽に入れる里山の紅葉としては県南、県内有数の絶景で村の誇りです。きのうの雨風で落葉がやや進んだものの、今週半ば頃までは、その見事な景観が保たれるでしょう。

味の王様も舞台へ、庶民人気ナンバーワンも

ご紹介が少し遅れましたが、キノコ界では「味ならシメジ」と名の通るホンシメジを今日は登場させました。

わが集落ではオオヒメジ、あるいはネズミヒメジと呼ぶホンシメジ。発生が遅れた今年でしたが、さすがに10月も20日を過ぎれば村ではもう採り頃を過ぎようとしています。

オオヒメジの名があるように、条件のよい環境では手のひらをはるかに上回る大きさの株塊に出会えることもあります。今年は発生にあまり適さない天候だったのか、こちらの「採り場」ではごくわずかの数しか見られません。

それに比べて発生が豊かなのは次にご紹介の「サモダシ・サワモダシ」(ナラタケの仲間)。

「サモダシ」は、楽に山入りできる住家すぐ近くの里山から深山とあらゆる場所で見られ、しかも一箇所での発生量が多く、味噌汁(時に秋田の伝統食・納豆汁)を主にして多彩な料理に活用できます。なので、県南内陸ではキノコ採取の人々がもっとも多く足を向けるのがこの「サモダシ」。キノコのなかで食卓にあがる回数が多いのも「サモダシ」。村では、庶民人気ナンバーワンのキノコと言ってよい存在でしょう。

ナラタケの仲間は種がずいぶん多いのですが、我が家では、この種を大きく3つに分けて呼びます。

まず、もっとも早く湿地や水辺の草むらや苔の上などに出る種を「ネスゲモダシ」と呼びます。図鑑で「ヤチナラタケ」とされるのはこの種でしょう。

次に、どちらかといえば沢筋や湿り気の多い土地で、ブナをはじめ各種広葉樹(時に針葉樹まで)の倒木や幹の根元などに発生するのは「サモダシ」。「サモダシ」も、大きさや色のちがいがほかにもあり、専門家によればさらにもう少し細かく種が分けられるようです。

3つめは、尾根筋や斜面、平地など比較的排水のよい土地で、枯れ木や半枯れ木の主に根元へ大量の塊で発生する真っ黄色で茎が長く株状になるのを「モッコラモダシ」(最後の写真)と呼びます。

粘性が一番少なく、採る時にポキンポキンと音のする「モッコラ」は、見かけはきれいですが、旨味は「ネスゲモダシ」や「サモダシ」より落ちるというのが我が家の格付け。

さて、今年はサモダシが多く採れたでしょうから、自家貯蔵も店頭も数は豊富のはず。いつもの年よりも納豆汁を楽しめる機会が増えるかもしれませんね。

クマにとって厳しい秋

異常なほどに人里や市街地へクマが出没しています。

この季節のクマの命をささえる主食はクリとドングリですが、今年のドングリはまれにみる不作のよう。毎年は実を結ばないブナの実とちがい、安定して実を結ぶドングリを頼りにしていたクマにとって、今年は思いもよらぬ秋となったにちがいありません。

森の生きものたちにとっては運悪く、ブナも今年は実をつけた木がとても少なく、ドングリは前述のようにどこにも敷きつめられたように実が落ちている年とは大違い。大食漢のクマにとっては、主食の実が極めて少ない、まれに見る厳しい秋となっているようです。

きのう午後の須川高原、森の一部に実をつけたブナが数本並んであり、そのうちの一本の木にクマが登ってブナの実を食べたらしく、枝を樹上で折り敷いた跡が見られました。こうして実をつけたブナやナナカマドの実などを探しながら食を得て高原のクマは日々を過ごしているでしょうが、ほかのクマたちは里山のクリをめざしたはず。

その里山のクリも、タヌキやアナグマ、リスやネズミなど多くの生きものたちと競合します。さらに急速に目撃情報が増えているイノシシはおそらくクリも食べるのでしょう。

それでもなんとかクリやほかの木の実で命をつないでいるクマはこれからどこに向かうのか。高い確率で予想されるのは人里のりんご園を主にして人家近くの食べ物のあるらしい場所。彼らがこれからもっとも向かいやすいのは人里となるはずです。

クマはよりいっそう人里へ下がる。それは積雪状況にもよりますが、越冬穴へ入る12月始め頃まで続くでしょう。そう思って警戒や対応策を考えることが必要です。

成瀬ダム工事事務所との行政懇談会

成瀬ダム工事事務所の村山所長さん、副所長さん、各課長さんにご出席いただき、村議会の行政懇談会がきのう行われました。

毎年恒例の研修・意見交換会で、堤体工事が本格化したCSG工法(セメント、砂、礫を固めた)によるダム工事の概要説明を受け、加えて各議員から出された質問への説明もしていただきました。

質問では、選択取水、貯水池の水循環やPH、成瀬ダム規模のCSG工法の特徴点、新型コロナ禍や自然環境と工期との関連、廃棄土砂の今後の措置計画などほかにもいくつか出され、丁寧な応答がされました。

後段では、懇談会としては初めて工事現場を視察し、降雪前の来月までを一区切りとしてCSG打設が盛んに行われている(視察時は打設前の清掃中)堤体そのものの上などで再び詳しい説明をお聞きしました。

工事現場の周囲まで紅葉前線が下りてきていて、展望所には須川高原への周遊で訪れた観光客をふくめ多くの方々が、ドライブの休憩をとりながら工事の様子をながめていました。

久方ぶり町村議会議長会の会議

きのう午後、県町村議会議長会の正副会長会議と理事会が県市町村会館で開かれ出席。

3月に集中した県内町議選をはじめ、それ以後の改選もあわせて議長会構成メンバーのうち5人の議長さんが再任や新任として議長職に就かれています。そういう経緯もあって電算議会定例会時の会議を除けば、春以来議長さんたちと一同そろって顔を合わせるのはこの日がはじめて。

新しいメンバーが増えましたので、議長会全体としても、新たな決意で団体の責務を果たしてゆくことを誓い合う会議となりました。

▼同じ集落の67歳になるTさんが、おとといからキノコ採りで遭難するという思わぬことが起き、きのう午後の会議に向かう車中で悲報を聞くことになりました。

現場は私も様々な目的でよく入る渓谷で、今秋もつい先の12日をふくめ二度も山入りしたところです。そこは、キノコ採りの場としては村内有数の深い谷と急峻な崖を特徴とした山です。きのう午前の少しの時間、ご家族、警察や消防、消防団、副村長、村役場担当課職員などが待機し捜索本部がおかれている遭難現場入り口にかけつけました。

午前には地上からの捜索隊とともにヘリによる空からの捜索も行われましたが発見されず、午後からの捜索開始後早くに無念な結果で確認されたということです。言葉にあらわせない悲報に接し、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からのご冥福をお祈りいたします。

キノコ採りシーズンはこの後も続きます。山入りの際には、心がけるべきことに鋭意務めることをお互い呼びかけ合いましょう。

森の恋人たちとの出会い続く

いつもの年より秋の訪れが遅れたために、森の恋人(キノコ)たちとの出会いが月半ばを過ぎても続きます。

今年比較的多く発生したのはシシタゲ(コウタケ)とクリカラモダシ(クリフウセンタケ)で、アガキノゴ(サクラシメジ)も20日~1ヶ月近く遅れたもののよく出ていて、今もまだ見られます。

とりわけ見事なのは里山のクリフウセンタケ(ニセアブラシメジの名もある)です。数年に一度ともいえる数の多い塊で発生し、傘の黄色と茎の白さでこのキノコ特有の姿をみせています。

同じような森の環境を好み、クリフウセンタケと食感が似ているヌメリササタケもぽつぽつと見られ、傘と茎が抜群に大きなウラベニホテイシメジもまだ採れ頃です。このウラベニホテイは一本あれば一人分の口に充分間に合うほどボリュウムがあり、我が家では、おでんや煮物でザクッザクッの歯ごたえを楽しみます。先にもお伝えしたように、毒きのこのイッポンシメジやクサウラベニタケとよく混同されるキノコですので注意は必要です。

▼先週も、今週も、日曜日の村の国道は紅葉の須川高原へ往き来する車でにぎわいました。こちらも、県境大森山トンネル付近のブナ紅葉と「天正の滝」や「いずくら」の紅葉進み具合をながめに昨日午後少しの時間車を向けました。

県境のブナの森は今が黄・紅葉真っ盛り。合居川渓谷の天正の滝やいずくらは、それより標高がやや低いので、見頃の色づきまではあともう少し。一週間も経てば谷の崖が錦に染め上げられるでしょう。