深山の幸を締めくくるキノコたち(その1)

10月もあとわずか。山間集落への降雪予報も聞かれるようになりましたので、今シーズン最後、ブナの森を写しがてら、深山の幸たちと出会いに向かいました。

向かった先は合居川渓谷。役場などで朝に所用をいくつか果たし、お天気がよいのでゆっくりと家を出発。まずは「いずくら」の紅葉をながめに立ち止まりです。天候にもよるでしょうが、紅葉の真っ盛り期間といえるのはほぼ一週間ほど。色づきが最も華麗なのは4~5日ほどでした。それでも、まだ「いずくら」らしい断崖紅葉の見頃は続いています。

渓谷のブナの森は、県境部ですでに落葉がほとんど終わり、それより少し下がってこちらが歩いた森で落ち葉のシーズン入りというところ。

この渓谷に昔からあった山道はすべて廃れていて、深山入りはいずこへ入るにも沢を何度も何度も渉り、時には滝をのぼります。やがて渓谷深くに広大なブナの森がひろがります。そこは、決まって私が歩を止め一呼吸つく場所。ブナ大樹のそばには、昔のハギミ(山菜、キノコ採りを生業とした人々)の方々が歩いた山道の跡がわずかにのこっていて、往時の人々の山入の姿をしのぶ林でもあるのです。

さらに渓谷の上流部をめざします。この日、出会いを期待したのは、何年もの間楽しませていただいているナメラコ(ナメコ)たち。

そのナメコと出会う前に目に入ったのは、味の良さで評判のブナシラダゲ(ブナシメジ)、そしてナメコとならんで晩秋の味覚の代表ムギダゲ(ムキタケ)も。さらに同じ晩秋の花形ヤマドリモダシ(クリタケ)も枯れた樹の根元に美しい姿で群生していました。

肝心カナメのナメコは、毎年いただいている倒木のほとんどすべてに、いい形で撮り頃(採り頃)、食べ頃の色に輝いていました。東北のキノコ愛好者たちのなかでは常に人気上位の位置にあるとされる天然ナメコ。原生の森と、そこで出会った今シーズン最後の山の幸、森の宝たちを、2回に分けてご紹介です。