シーズン初の里山歩き

10日、自家用生活用水の取水源見回りついでに里山へ少し上がってみました。

ハデ(雪原)の雪は深く、キャンジギ(和カンジキ)を履いても膝近くまで足が雪に沈みます。沈む深さがその半分ほどなら、お隣山内三又との郡境まで上がりたかったのですが、70歳でこの深い雪を何時間も漕ぐのは無理。やむなく、いつもの3分の2まで上がるだけの歩きとなりました。

途中、86歳になるKさんが、山の麓にある農作業小屋の雪下ろしをしています。「こごまで、来るのに、1時間かがったァ」とKさんは言います。86歳になる方がカンジキ履きで沢の奥まで上がり、大きな小屋に1㍍以上降り積もった締まって堅い雪を一人で下ろしているのです。その頑健な身体には、こちらもたまげてしまいます。

毎年お伝えしているように、この沢で農作物を作り続けているのはKさんの家だけ。何処の沢目と同じように、この沢の田んぼでの水稲作付けもすべてなくなり、Kさんが沢の農地の最後の守り手として妻とともに畑を耕しています。やはりKさんもここでの水稲栽培は数年前に止めています。

管理条件の悪い山間農地の保全は国の大きな課題です。豪雪の村では農地の近くに作業小屋などがあれば、それを雪からまもるための格闘もさらに加わります。

元猟友会員でもあったKさんとよもやま話を交わしてから沢のさらに上部へ。雪が深いのでこの日は杉林の樹下をなるべく選んでの歩きです。杉林では、寒気の緩みにより枝に降り積もった雪が高所から落ち、樹下の雪が固められて歩きやすいのです。

ただし、枝から落ちた重い雪や折れた枝を頭にまともに受けたら大事。なので落雪の様子を察しながらの歩きです。運が悪ければ、落ちてきた雪で体を傷められるということもありますから、そこは要注意の樹下歩きです。それでもハデ(雪原)より樹下を選ぶのは、若い時とちがって深い雪漕ぎはそれよりもなおつらいからです。

樹齢100年をはるかに越えているだろう見ほれるような造林杉の下を通り過ぎれば、やがて里山はブナとミズナラの混合林となります。そこから見晴らしのいい尾根に上がると、成瀬川沿いの手倉、椿台、大柳、ダム工事現場方面が南真正面にのぞめます。

成瀬川、ジュネス栗駒スキー場、東山、秣岳方面も山容はくっきり。ただし東の焼石連峰・三界山方面は頂に厚い雲がかかっています。西和賀町境の蟻巣山はよく見えます

下った取水源の沢はほとんどが雪で隠され、ヤマメの棲む淵もまもなくすべてが雪で覆われ尽くされようとしています。この日、目当てとした生きものたちとの出会いでは、リスとテンの姿をほんの一瞬目にしただけ。それもシャッターチャンスはありませんでした。