ねばねば、つるつる、さくさく、のキノコ

いつ、どこで、だれが、なんのために、なにをしたのか、これは新聞記事のみならず、ほかにつたえるという目的のある文章には書かせぬこと。が、貴重なキノコや絶滅危惧種の動植物などを紹介するときには、それがなぜかはおわかりでしょうが、その「どこで」だけがあいまいな表現となります。

先日、あるあつまりで、幾人かの方々から、そのあいまいさが酒の肴として話題になり、笑いとなりました。申し訳ないながら、今後もしばらくは、それらの菌類、動植物については、場所が特定されるような書き表しは控えますので、ご承知のほどを。ひんぱんにあいまいな表現にならざるをえない季節が、また今年もやってきたからです。

「貴重なキノコのあり場所は家族身内にも知らせない」とよく言われます。それほどではないにしろ、山人は、自分が開拓した山の宝物、秘密のありかをいくつかは持っているものです。なので、しばらくは、その宝のありかを大事にしたいという心がはたらくことが山人にはよくあること。その「開拓地」は、小さな、自分だけの誇りみたいなものなのでしょう。ちょうど海の漁師さんが、自分だけが知る漁場を持つように。昔の山の猟師が、自分しか知らないと思っていた獲物のいる場所をもっていたように。

CIMG0443-1CIMG0450-1CIMG0469-1CIMG0476-1CIMG0480-1CIMG0486-1ということで、家のすぐそば、うーん家から3分、およそ500㍍の円内にはいるほどの範囲でしょうか、そんな里山でマヅシタキノゴ(ラクヨウとも呼ぶハナイグチ)が顔をだしはじめました。早生ものはどこでも盛りといってよい発生の様子で、いつもより足早のシーズン到来です。

CIMG0489-1このキノコは、ごく近くの里山で採れ、しかもカラマツの樹下に発生するのでどなたでも見つけやすく、村ではそんなに貴重扱いはされていませんが、キノコとしての品格も美的要素も、味も、そろってこの上なしのハナイグチ。おそらく都会などの飲食店で、これの刺身風料理や、うどんなどに具として添えられたら、値が少々張ってもお客さんは「これは美味い」と満足の笑みをうかべるでしょう。ねばねば、つるつる、さくさく、酒の肴になら、もってこいのハナイグチですから。

CIMG0487-1CIMG0457-1地面には、スギヒラタケやホコリタケの仲間も顔を出していました。