胃カメラをのんで

めずらしく、病院のお世話になったことを先日記しました。

事のはじまりは、村の集団健診。「精密検査を要します」という旨のお知らせをうけたことから。こういうことではよくない例に入りますが、この3年間ほど、忙しさを理由にして健診を受けておらず、今回久しぶりにすべての検診をうけたら「胃」の部門でこういうお知らせをうけることになったのです。

このおよそ20年来、病院とも、お薬とも、自分の体ということではほとんど縁がなかっただけに、胃がん検診での「要精密」の文字を前にして「んっ」と心は少々穏やかでなくなりました。

ただ、食欲も、胃も、その他五臓に係わるらしい内臓の調子は万全ということを自己診断ではよくわかりますので、カメラをのめばすぐに「異常なし」はわかるだろうと「わ(自分)の体は、わ、で、わがる」と素人確信はしていました。確信はしていましたが、結果が出るまでの間はどうも何をしていても胃のことが気になるもの。こんな心のうごきはもちろんはじめてのことです。

この日の病院、同じ日に、同じように内視鏡検査を受ける方は、胃や大腸などの別はあるものの、その人数の多いことにびっくり。私のように集団健診などで「仮判定」された方々が多いのでしょう。それにしても、こちらが受けたのは胃がんの検診ですが、大腸がんの内視鏡検査を受ける方が多いのは私の思案を越えていました。

むかしから「腹のうちはわからぬ」「腹がたつ」「腸(はらわた)が煮えくりかえる」「腹ぐろい」「腹にすえかねる」「腹がすわる」「腹を探る」と、辞書をながめてもまだまだなんと多い「腹」言葉。人の心の動きを伝えることばを臓器であらわすなら、普通なら心の臓で「胸」をあて、「胸」に連なる言葉もこれまた多いのですが、「腹」言葉は「胸」言葉よりもどちらかというと生々しい感、直接さをもちます。

よくよく思案したらなるほどと思いました。この「腹」は、単に消化器だけでなく五臓六腑全体をさす言葉で、それに、心が病めばそれが胃潰瘍や十二指腸潰瘍など消化器官の病につながるということもあるのです。私は今回、食道、胃、十二指腸までの腹のうちをお医者さんとカメラ様に全部みてもらい、自分でも写真をながめましたが、荒れは少々あるものの見たところはまずまずのすっきりさでした。もちろんガンの兆候は微塵もなしです。

ほんとうは1年に一度、くっきりとした「腹のうち」をみてもらえば「さあ、オレの腹のうちはこんなにきれいだぞ」と言えるでしょうが、カメラ呑みはなかなか、へずねぇ(苦しい)です。20年ほど前にのんだ時とあのときの苦しさはほとんど変わらず。カメラ機器そのものはそんなに進化していないのかとふしぎに思いました。20年も経つのにです。ただし鼻から挿入という進化はあるようで、これはまこと「へずなぐ」ないのでしょうか。