カモシカには崖に立つ姿がお似合い

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▼長年の保護行政が効果を果たし、特別天然記念物とまでされたニホンカモシカが全国で増え続けているようです。

私も、依頼されたカモシカの生息調査を猟友会の仲間と何年かおこなってきましたが、その生息数の多さにはたまげてしまいます。

町や村の住宅地や農地に出没は今はごくあたりまえで、県都の市街地にまで顔を出すこともたびたびですから、彼らの生息数が増えていることはみなさんよくご承知のこと。特別天然記念物なのに、そんなにめずらしい動物でなくなるほど頻繁に姿がみられるのは、意外といえるかもしれません。

▼ただ、動物の世界は複雑。同じ種でも、東北では生息数が多いツキノワグマが、九州ではほとんどみられず、カモシカも四国などでは絶滅危惧種としている県もあるようです。カモシカやクマにとって西国はどうしてなのか、すみにくい環境にあるようです。

カモシカもクマも農作物などへの被害で有害駆除あつかいとなっている県もある東北は、野の生きものたちにとって今は楽園といえるのかもしれません。もしかしたら、クマも、このままだと東北ではカモシカなみに増えつづけるのかと私には思えてきます。

クマさんは半年間のお休みをとりますから、冬は彼らとの出会いはありませんが、カモシカは夏も冬も集落そばに棲みつきごく普通に見られます。

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▼週末にわが集落を通ったら、道向こうに二頭のカモシカが。二匹とも大きさからして成獣のようでどうも親子ではないように見えますが、こんなに早くからオスとメスがともに生活をしているとも思えませんし、どんな関係の二頭なのか私にはわかりません。

DSC_0642-1▼現場は、夏ならいかにカモシカでも立つには警戒を要するほどの斜度のきついガケ。なのに、今は雪があって大丈夫、二頭はそこの小柴の芽を盛んに食べていました。カモシカにはやはりこんなきついガケに立つ姿がお似合いです。

まだカモシカの狩猟が禁止されなかった昔の村のマタギたちは、真冬に県境焼石連峰奥深くまで入り「宝のような肉や毛皮を求め」カモシカ猟をしたことをききました。それから半世紀以上たった村では、むかしのマタギたちの住宅すぐ前でカモシカがゆうゆうとこうして食をとる。人のかかわりが自然にどれだけ大きな影響をあたえるのかを考えさせられる一場面です。

▼例年そうですが、立春を過ぎてから「今冬最も厳しい寒気襲来」ということで、吹雪の集落の外気はマイナス7℃。厳冬のヤマ場は今週か、それともその後か、少しの春を感じたり、最も寒い日があったりで、心も体も空にゆさぶられる日々となりそうです。