秋にイワウチワ咲く

桜などに時々ある季節外れに咲く花。あたりまえでない時に咲くものですから人々はそれを見て「狂い咲き」などともいいます。

でも植物にしてみれば、たまたま花の咲く環境がととのったから咲くのでしょう。実はこのほど足を踏み入れたブナ原生林のなかで、初春の花イワウチワがたった一輪、秋なのに咲いていました。

長い年月、ブナの森を歩いていますが、晩秋に咲くイワウチワの花を目にしたのははじめて。いま花が咲いても、春とちがいミツバチなどの虫媒ができるわけでもなく、それでも大群生のなかでたった一輪だけ花を咲かせる株があるというのはなぜなのでしょう。だから「狂い咲き」などと言われるのかもしれませんが、自然には不思議なことがいっぱいです。

▼先日、「これ、何だ?」と友人がツチアケビを届けてくれました。落葉が少しずつ進んで、それまでの草藪がいくらかきれいになり、林やヤブの跡がすっきりと見通しよくなります。すると、草に覆われてよく見えなかった赤いツチアケビがとても目立つようになり、友人は「まだ、えっぺぇ(いっぱい)あった」と言います。今年は、ツチアケビにとって生育条件のよい年だったようです。