失ったり、あたったり

目的はどんなことであれ、山入りをするとよく山中に落とし物や忘れ物をしてしまうとんまな当方。この間、人里近くの林に入ったときは、宝物のようにしているナタが鞘から抜け落ちたのを気づかず歩き、紛失したことを車に乗る時になってはじめて知りました。

ナタはナタでも、そのナタは阿仁の鍛冶屋さんがうったやや値の張るマタギ鉈。山歩きや遭難救助をふくめ私があらゆる山入り道具の中で、一番大事な次の次あたりに大事にしている宝の道具。それを紛失したことはしばらく妻にも伏せていて、どうも、心穏やかでない日々がしばらく続いていました。

歩いたコースはほぼわかるものの、広い林の中ですからどこで落としたかはわからず、それに地面に横たわったナタの上には落ち葉も重なっているはず。発見はおそらくむずかしいだろうが「雪の降る前に一度さがしに行く」と決めていて、過ぎた週末にナタさがしの山入りをしました。

ナタはありました。車から下りて3分ほど、あきらめていたナタは落ち葉を少しかむりながらもすぐに発見でき、自作自演ながら、よろこびにこちらはしばらくひたりました。

CIMG1608-1CIMG1610-1CIMG1617-1CIMG1620-1CIMG1621-1CIMG1670-1CIMG1676-1CIMG1681-1CIMG1686-1それからです。「ついでに少し林を歩いて見よう」とすぐそばの国道を車がブーンブーンと通る里山のナラ林を歩いたら、まずムラサキシメジが見え、その直後に、里山ですからそんなに太くないミズナラの根元に大きなマイタケが。

これにはこちらもびっくり。食べ物はなんでも晩生種がおいしいし品質も高いといわれますが、きのこのマイタケも同じ。霜の降りる今の時期に稀に採れるマイタケをわが集落では「霜降りミャゴ」と呼び、「最高級の味と質のマイタケ」としてあつかってきました。

しかも、それが、車から降りてすぐの里山の林ですから、驚くやらうれしいやらで、思わず声をあげてしまいました。あげた声音の中身は省きますが、半ばあきらめていたナタが簡単に見つかり、つづいて今度は最高級マイタケ2個を里山の林で手にできたのですから、その時の様子はご想像できると思います。「山の女神様のお導きだな。このミャゴ(マイタケ)をオレに採らせたかったのだろう、女神様は」などと、勝手な筋書きを思わずつくってみたりもするほどに、これはうれしかったです。

ほかにこの日はサクラの枯れ木で里山のナメコも。「山を歩けば何かにあたる」と時々記してきましたが、失ったり、あたったり、仕事と同じで、動くということにはいろんな出来事が待ち受けているものです。

ムキタケ、シモフリシメジ、めずらしくカラマツの倒木に出ていたクリタケ、それに極晩生のサモダシと、この間出会った晩秋のキノコたちも加えておきます。