タケノコ採り遭難者の捜索救助活動へ

「焼石岳からの日の出を久しぶりに拝んでみたい」は、ここ数年来の望みであった。それで、天気もよさそうだしということで11日の土曜日に急きょ実行の段取りをたてた。10日の深夜11時過ぎに自宅を出発する予定でそのための準備を整えて夕食を済ませ、リュックをいつでも背負えるようにして、少し居間で横になっていた。

きのう12日は、村や地元要望などでお世話になっている管義偉官房長官の政談演説会が湯沢で行われることになっていて、議会にもご案内がきていた。それで、ハクサンイチゲやミヤマシオガマの花盛りに朝日を拝めるのは「11日しかとれない」とふんだのである。

ところがである。その横になっている時に携帯電話が鳴った。電話の先方は、猟友会の先輩、消防団の部長を務めておられるKさんで、「須川で、タケノコ採りが遭難したので、明日の捜索に加わってほしい」という内容。

捜索救助隊の一員として、もちろん「遭難者捜索救助最優先」が当然なので「了解」をお伝えし、心始末を山登りから捜索へと切り替えた。「朝5時半に隊員を乗せるバスが役場を出る」ということなので、リュックに詰めた山登り用の3つのカメラや三脚を取り出し、小さなカメラ1つだけを持てるようにして、食べ物、飲み物、持ち物など中身の一部を山登り用から捜索用に詰め替え、床に就く。

翌日、目が覚めたのは3時頃。妻とともに3時半頃には起床した。消防活動もそうであるように、こういう任務は、本人だけでなく捜索隊員家族みんなの協力があって成り立つもの。いろいろと捜索のために必要と思われる細かな備品を再点検、遭難の模様を伝える朝刊を読み遭難者の名前と年齢をまず確認、4時半には朝食を済ませ待機した。

現場のすぐ近くでは、9日にもタケノコ採りの遭難が発生、10日に救助されている。だから、警察や広域消防はもちろんのこと、地元消防団は、2日連続で別々に発生したタケノコ採り遭難者の捜索救助活動にあたるということになり、捜索救助隊員たちの一定数は2日連続で山入りの方もいた。

前日の10日は湯沢雄勝管内の68歳の男の方の遭難であったが、この日11日の遭難は山形県新庄市の79歳になる女性の方。例年この山に入り続けている方で、初心者ではない様子。

CIMG4202-1CIMG4078-1須川高原地区では、タケノコ採り遭難が過去に最も多発した箇所が今回も遭難現場となった。捜索救助隊はいつものようにいくつかの班に編成された。私が属した班は、界隈で捜索活動が難所とされるうちの1つの沢に入り、なじみの隊員の方々と5人でくまれた班員の一人として捜索救助活動にあたった。

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打ち合わせ後、沢に下りる地点まで車で運んでもらい、我々の班が山入りし歩き始めたのは朝7時14分。上空からは県警や消防のヘリが我々の歩く沢の頭上からも捜索。われらの班は上流へむかって途中いくつもの滝壺などを確認しながら、ほかにも窪地や岩穴、足跡など遭難者発見に結びつく箇所に注意を払い、クマの生活痕やツメ跡までわかる新しい足跡が土に残る沢をのぼった。県内のクマによるとみられる痛ましい被害が頭をかすめた。

CIMG4123-1CIMG4138-1CIMG4141-1CIMG4143-1CIMG4159-1ほかの班からも遭難者発見に結びつく情報がないもと、沢の支流の一部にも入り、さらに沢を上流にむかいながら「今日の救助は無理だろうか」と考えはじめた午後2時24分頃、その沢に歩けないでいる遭難の女性をわが班の一同が発見。女性に目立つ大きなケガはない様子で、疲労で精根尽き果てた様子だが、話しかけにも明快にこたえられる状態に一同、ほっ。無事発見の報が本部に伝えられ、消防ヘリ「なまはげ」がまもなく我々の上空に飛来、遭難者は病院へ直接搬送された。

CIMG4164-1CIMG4170-1CIMG4177-1CIMG4185-1我々が近寄ったときの「助かった!ありがたい!」という女性の安堵の言葉と表情が忘れられない。それに、女性が無事ヘリに収容され、ヘリの隊員たちと我々が手を振り合って合図を交わし合った場面での胸の熱くなった瞬間も忘れられない。遭難者捜索救助にあたる者同士だからこそより強く感ずるのだろう連帯の気持ち、それが強く湧いてきたのである。何よりも、無事に救助することができたからこその「よかった」に、我々はしばらく浸りつづけながら沢をまたのぼり、一人の命を救う活動を終えた。

CIMG4182-1CIMG4187-1CIMG4189-1CIMG4190-1CIMG4193-1CIMG4194-1ヘリが飛び去った後、オゲッコツツジ(ウラジロヨウラク)の咲く沢の途中で休憩、無事発見救助という任務をなし終えた笑顔の消防分団部長で先輩のKさんと班の隊員たちである。沢から国道に出て、私は、この日ご来光で向かう予定であった北方の焼石連峰を振り返った。

▼この現場でのタケノコ採り遭難を防止するために、これまでも各対策がとられてきたが、これまでの延長線にある対策では遭難を防ぐことができないことはもう明瞭である。

警察、常備消防、自治体、消防団、捜索救助隊など、遭難対策は大きな費用と時間と力の傾注を必要とする。だからこそ、何よりも尊い人命優先のためには遭難そのものをなくす防止策が求められる。今年中に、法の適用などを考慮した抜本的な対策づくりが必要であろう。

同じような遭難が再発しないシステムづくりにむけ関係機関が集中して協議し、抜本対策案が練り上げられることを期待したい。そういうこともあって、文章はいつもの倍近く長くなったし、捜索中の写真や我々が手にしている捜索関係地図も載せてみた。遭難対策に関わる方々なら、写真や地図から、とるべき課題が推測、あるいはすぐに読み取れるはずである。