村猟友会恒例のノウサギ巻き狩りの12日。夜にふわっと重なった雪の上にはノウサギの新しい足跡がよくのこっています。カンジキを履いてもズホッズホッと足が雪に二度沈みし歩きにくく、やや肌寒し。でも時々晴れ間があり、風はなくまずは申し分のない狩り日。
今冬の最深積雪を3月10日に記録した椿台は200㌢、大柳は218㌢で、豪雪対策本部などが設置されない年にしては、めずらしく3月半ばに積雪が案外多い春です。そういう雪の多さもあり天気の条件もよかったのでしょう、巻きでは6羽(6匹ではなく、村のマタギたちはむかしからノウサギは鳥のような数え方もした)のノウサギ猟果があったようです。
夕刻からの宴では、ここの宿でしか味わえない、野生獣特有の臭いを消す独特の調理術でつくられた骨ごとぶつ切りのまことに美味なウサギ鍋、希少なロース肉と肝臓の刺身、腸の即製塩辛など「豪華」な料理がならび、捕る趣味(むかしは生業でもあった)につきものの「ホラ噺」などをふくめ愉快な懇談が続きました。
当日狩られたノウサギはすべてその場で競りにかけられるのが近年は恒例となっていて、バブルの頃よりは値が低いですが、一羽8千円ほどが競りでは平均相場となっています。競りといえば昔のクマ狩りの宴では、生薬として用いる高価な熊の胆をはじめ、皮、背骨、手足の骨、肋骨、頭、オスの性器、脾臓、脂肪(皮下脂肪、内臓の脂肪)、腸(時には肉の一部も)など、肉以外のほとんど体の部位が競りにかけられ、熊の胆だけで30万円代のときもあれば、30数年前のある日など、一晩で75万円ほどの合計競り値になったという記憶もあります。
狩り人にとっては、猟のスリル・醍醐味への魅力もさることながら、競りもまた楽しなのです。なにより、競りは座がにぎわって愉快になりますからね。写真の笑顔をみればその雰囲気がおわかりいただけるでしょう。
当日、用水路取水口に詰まったゴミ掃除にむかいました。雪原のノウサギの足跡をみれば、多くは二匹が同じようなコースをたどっています。それに、「しょんべん、ぶっちらす」とマダキが表現してきた尿の茶色跡がしきりに残されるようになります。いずれも繁殖期特有の行動と印しです。昔から「春ウサギは、すぐそばに2羽いるがら、油断するな」と教えられたもので、雪国のノウサギ猟は、季節の別や新雪の深さ加減によって、12月、1月、2月、3月と、それぞれノウサギの生態に違いがあり、それをよく知ることが腕前上達の秘訣とされてきたのです。どこにいるかを知る、これは猟・漁に共通の技です。
ノウサギが繁殖期に入った3月半ば、用水路取水口の沢はまだこんなに雪があります。厚さは2㍍ほどでしょう。夏に童と戯れるヤマメやカジカが棲む小さな淵も今はまだひっそり。頭上にはヒラ(底雪崩)がぱっくりと割れ目をつくっています。その淵を取り囲む雪上にも、まもなく太公望の足跡がつけられます。まぶしい春も間近です。