ついに、稲作りがゼロとなった沢田

戦前、戦中、戦後と、集落の人々、村民はもとより、多くの国民の食料をささえた山間の田んぼが年を追うごとに稲田の姿を消してゆきます。

国では耕作されない農地の解消を叫び、我々もその対策のために力を尽くしていますが、稲作をめぐる情勢の悪化と農家の高齢化は、農地の荒れを加速させる一方です。

とくに荒れが目立つのは、市町村でも山間にある沢や支流域に開墾された「沢田」といわれるたんぼ。わが村でも、田んぼ全体が稲作をやめた沢は年々増えるばかりです。

CIMG4054-1CIMG4055-1我が家の裏手にある2つの沢も昔から「沢田」がたくさんありました。ところが1つの大きな沢は減反開始とともに少しずつ畑地化し、稲作が完全に絶えてから久しくなっています。もう1つの沢も似た傾向にありましたが、同じ地にたんぼをもつ農家のうち、今年81歳になるKさんが妻とともにがんばって昨年までたった一戸、沢での稲作り、野菜づくりに精をだしてきました。

しかし、Kさんも、よる年波の中でついに今年お米作りは断念。いつもの年なら緑となっていた棚田も、今年はきれいに耕起はされたものの水は張られず。たまたま道路の草刈りに出てこの状態を目にし、「ちょっと、とじぇだなぁ(寂しいなあ)」と、いっぱいの作物をきれいに作付けして畑仕事に励んでいるご夫妻に声をおかけしました。

「ハダゲなば(畑だと)、草取りなんぎなんだべがら、田ぁつぐれば(たんぼをつくれば?)」
などと、Kさんの事情もお聞きしないで勝手なことを話しかけたりもしましたが、そんなことはとっくに承知のKさんは、「俺やめれば、この沢さ、へってくる人、えなぐなる(入ってくる人、いなくなる)」と、笑いながら語りました。

餓えに苦しむ世界の民、約8億。水豊か、豊穣の田があるのに活かされぬ全国の膨大な山間農地をかかえる瑞穂の国。この落差、隔たりを人類社会はいつ解消できるのでしょうか。

CIMG4042-1CIMG4043-1▼同じ種なのに、自然界にはたまに本来の色をつけない「白色」の花を咲かせる個体がうまれるものです。

今年も、山間の国道沿いにあるガザキ(タニウツギ)が、たった一株だけ白色の花を咲かせていました。ピンクのガザの花も、それはそれでよく観れば美しいのですが、なにしろどこにでもあるためかそれほど注目されません。でも、それが白花のガザとなると希少ですからいっきょに注目が集まります。

どんな世界でも、希少は価値が高くなるということで、普段ならそんなに見向きはしないガザも、「白花」というたったそれだけで通る人々の関心を集めています。
▼今日10時から6月定例会議です。行政報告、傍聴にぜひお出でください。