雪上を蟻巣山へ

CIMG3185-1CIMG3181-1「年に一度は」の残雪の尾根歩きを、おとといやっと実行できました。歩きは朝の8時から11時ちょっと過ぎまでのたったの3時間。向かったのは、合居川と岩手県西和賀町の南本内川境に位置する蟻巣山(ありすやま・1162㍍)。

蟻巣に向かったのは、短時間で行けるにしては展望がよくひらけて気分がよい山だからです。このコースは土倉沢沿いにのぼり、以前は三界山への登山の一コースとして歩いたところ。その時は、いったん県境まで上がり道路沿いに少し下り、蟻巣の裾をたどってジショウのテイ(時宗の平地)を経て三界山にむかうのが私たちの歩きでした。

今回は、目的が蟻巣山なので県境の道路境地点から尾根をまずは南に進み、途中から東にむかってややきつい斜面を横切り、蟻巣の北川山腹は崖と雪崩が危なくて登れないので今度は合居川と分水をなす県境の尾根に移り、蟻巣山の頂上に至るという歩きをしました。

CIMG3180-1途中、県境の秋田側尾根にたった1カ所、杉の木があります。ここは部落の入会地でブナの若木が育つ林ですが、なぜここにわずかの杉があるのか不思議です。どなたかが何かの目印に植えたのか、岩手側の植林地から種でも飛んできて実生が育ったのでしょうか。

CIMG3187-1朝のうちの北側急斜面は雪が堅く、ちょっとしたアイスバーン状態。今年は雪が少なく、尾根の広い範囲はネマガリタケが出ているのでやぶこぎを避け雪のある斜面を横切ることにしました。ただ、これほど雪の堅い急斜面を歩くのは久しぶりのこと、滑り落ちぬようにだけ気をつけながら、久しぶりに緊張した一歩一歩をていねいに踏んで登りました。
県境尾根にはマンサクの花が厚い雪の上で満開。ブナの幼木は、尾根特有のダシ(吹きだまり)に押さえられて苦しそうに弓なりのまま雪の中です。小枝にはノウサギの食べ跡も。

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CIMG3222-1CIMG3212-1CIMG3210-1予想どおり展望はまことによし。晴天花曇り(黄砂?)で岩手山は望めませんでしたが、南本内川とその支流、焼石連峰の山々、大森山のはるか向こうには栗駒山もくっきりです。1162㍍の孤独な頂では、ホー ホケチョの鳴き声をもつ小鳥と時をともにしました。

若い頃から何十年もの間クマ猟に駆けまわった合居川の名だたるクラ(崖)の猟場は、大森山麓側の西からタギノマダ(滝の又)、ナナグラ(七倉)。合居川渓谷を大きく二つに分ける境の尾根ナカザキツル(ナガヅル)。蟻巣側では西からカビラ、アガクラ、シゲマツのごく一部のクラ(倉・崖)などが眼下眼前にひろがります。

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東日本大震災の直後の4月、クマ狩の記録撮影をおこなった合居川の全体を、この日はメインのカメラを据えた大森山頂上と向き合っている反対の蟻巣山からじっくりとながめました。こうしてみると、合居川の谷も大きい。雪崩の落ちたクラ(崖)を見ながら、あそこで、あそこで、あそこでと、過去にクマとむきあった崖での場面を思いうかべました。
帰路、雪崩跡の小沢に今々のクマの足跡が雪上に。彼らの動きも活発になったようです。▼「やれる時にやれることを」と、旧式のクロ(畦)削りにきのうは一日を費やしました。