所用で家々を訪れる機会が多い当方。その都度、冬でも玄関に様々な鉢花があるのを目にすることがよくあります。
昔なら、雪国の冬の季節に生花や鉢花などを家庭でながめられるのはごく限られた家庭層だけだったでしょうが、今はこれが当たり前の生活風景になっています。社会が発展し、人々の心のゆとりが、花を愛でるというささやかな幸せをつくりだしているのでしょう。
わが家で冬にもっとも愛される鉢花は妻が育てるさざんか。子どもの頃、小学校の音楽授業で、「さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき」という唱歌をならったことがありました。雪国の村にさざんかという花木はありませんでしたから、「さざんかって不思議だな。冬に花が咲くなんて」と思ったものです。私にとっては、「春の小川」や「散歩唱歌」の~♪若草 もえる 丘の道♪~とともに大好きな詞と曲でした。
それから年月が経ち、冬に太平洋側の地方にはじめて足を踏み入れて「さざんか」の花を生け垣などで目にし、「ほう、これが、あの、さざんかだったのだ」と、学校で唄った頃を懐かしみ、その花に特別の郷愁を感じたものです。
雪の村の外はすべて真っ白の世界でもちろん花など無し。そんなとき、寒気のなかで次から次へと新しい蕾を膨らませ、玄関で花開く常緑のさざんかは、わが家の小さな「希望の象徴」とでもいいたくなるほどに、ありがたい花です。
色によって様々のようですが、さざんか全体には「困難に打ち克つ」「ひたむきさ」という花言葉があてられているようです。今朝は今冬一番の冷え込みでマイナス9℃。そんな厳寒の朝に咲く花びらをみていると、なんとなく言葉の意味がわかるような気になります。