想定外の雪崩

国道設置の温度計が氷点下5℃を刻んだきのうの朝7時半頃、役場へ向かう途中わが集落入り口里山でヒラ(底雪崩)が目に入りました。

今の季節、雨天や暖気の日ならヒラがいつ発生しても不思議でない時期となっていますが、このヒラは私にとってはまったく想定外の現象。

想定外の理由は、おとといは真冬日の気温と吹雪、そしてきのう朝までその寒さは続き朝にはマイナス5℃まで気温は下がりました。つまり、あの低温の下で、おとといからきのう朝までの間にこのヒラは発生したのです。

繰り返しますが、表層雪崩とちがい全層雪崩は暖気や雨天でよく発生するのは常識で、氷点下気温では普通は雪崩ないというのも雪国のひとつの常識です。しかし、斜面の状況、雪の積もりようなど諸々の条件が重なれば、真冬日状態の天候下でもヒラ(全層雪崩・底雪崩)が発生するという、その現場がこの写真です。

この様子を見て、冬山を長年歩いた私は「山歩きでは、まだまだ自分の想定外がある。気をつけねば」と思いました。

ヒラではここ数年の間に私にとってはいろいろな想定外がありました。たとえば、まったく斜面に雪のひび割れがない状態から突然ヒラ(全層雪崩)が発生した現場も目にしました。ワス(表層雪崩)ならその現象はごくあたりまえのことですが、ヒラでもそんなことがあるのです。また、斜面に大きな林が残っている所まではヒラが落ちてこないだろうと普通は考えがちですが、そういう林の中にまで大量のヒラが押し寄せた現場を今年は目にし、ここにも記したことがありました。

いずれの場所も、雪のくらしに慣れすぎた人にとっては「ヒラはないだろう、だいじょうぶ」と決めつけて足を踏み込んで不思議でない斜面なのです。普段歩くような場所に発生したヒラ、写真のような程度のヒラでもその破壊力は大きく、人間などひとたまりもなく打撲と窒息で命を奪われてしまうでしょう。山入のみなさん、ひび割れがなくても、低温下でも、寒い朝の時期でも、林があってもヒラは発生することがありますから要注意を。

ヒラの下、国道沿いの庚申塔はこんな雪状態です。おそらくこれが今冬の積雪のほぼ最深状態となるでしょう。