多くの人々に愛される「庶民的」なキノコの代表格モッコラモダシ(ナラタケ)、それに晩生型のサモダシ(ナラタケ)、その二つのキノコが本番入りのようです。
最初の幾枚かの写真は、こちらが歩く山では今年は不作ぎみのモッコラモダシの食べ頃の株です。わが家脇の草むらの中にある枯れた木の根元、そして裏手里山のナラ枯れ木に出ていたモッコラモダシです。これだけあれば、何日もの間の味噌汁や鍋物をおいしい出汁でいただくことができます。
モッコラモダシは、10月半ば頃に発生盛期をむかえる遅出のキノコで、ナラタケの仲間としては最も晩生に近い種です。モッコラモダシは、株の塊が大きく多く、サモダシよりもぬめりが弱く、柄がするりと長いスタイルが最大の特徴です。写真にあるように直売所の店頭などに並べられたのを見ると、時に地面に生えるセンボンシメジと間違われるほどの見事な塊も見られます。(センボンシメジは色が白く柄がモッコラよりも太めで発生時期も少し早く、木の根と共生するキノコで区別はすぐつく。)
一方のサモダシ(最後の2枚の写真)は、広葉樹(時に針葉樹にまで)の倒木や枯れた枝葉、土に埋もれた枝葉、切り株、枯れ株、湿った地面など発生箇所は広範囲に及び、種類も多彩です。モッコラモダシがどちらかといえば水はけの良い林を好み、倒木よりも広葉樹の切り株や枯れ株に発生が多く、湿った所には発生が少ないという特徴とは別れます。
むかしのガイド本では、モッコラモダシとサモダシの二つのきのこを区別しないでいずれもナラタケとし大枠でいっしょにしていたのが多いようですが、近年の刊行本ではかなり種が分けられています。村でキノコを採り慣れている方なら、サモダシとモッコラモダシのちがいは種として一目瞭然ですが。
ですから、わが集落では、二つのキノコをはっきり別あつかいして、一方にはモッコラモダシ、もう一方にはサモダシの名をつけたと思われます。前述のようにサモダシ(ナラタケ)にもいろいろな種類がありますが、早出のネズゲモダシ(ヤチナラタケ)にはじまりやや遅めのオオナラタケなどをふくめ発生の期間が長いのが特徴です。春、タケノコ採りの時期に出るサモダシもありますから。
モッコラもサモダシも味がよく(味はサモダシがやや上かな)、里山から深山まで発生し、比較的簡単にそれも大量に採れることから、村ではもっとも多くの人々が秋から冬まで利用するキノコです。村の伝統食「納豆汁」(納豆をすりつぶして味噌汁とする料理)には、とくにサモダシは欠かせぬキノコ。今のところやや不作ぎみの今年は、ナメコなどの代用が多くなりそうな気配です。