名峰・東山あれこれ

村から望む県境の名峰が、これからはとりわけひきたつ季節となります。それぞれの頂や稜線の真っ白さがいっそう青空に映えるようになるからです。

栗駒山塊、焼石連峰とならんで、村の名峰にあげられる東山もそのひとつ。

いずれも県境部にある山々ですが、東山は登るだけではなく、ビューポイント付近の国道すぐそばからすばらしい山岳景観をながめられることでも人気のある嶺です。

東山は、向かって左のドカッとした山容の東山(東山森・1,117㍍)と、右側の奥にある秀麗な姿の東山(1,116㍍)とがあり、地元では2つの峰とも「東山」と同じ名をつけて呼びます。その呼びかたは、それぞれを前東山、後ろ東山とか、上東山、下東山ともいいます。かつて土地の長老から、どちらをどう呼ぶかお聞きしたことがありますが忘れてしまいました。地元の者でないので、どちらが前だか後ろだか、上(かみ)だか下(しも)だかいまも私には区別が分かりません。

左側の大きな東山(東山森)には登山道がなく、右側奥の秀麗な東山には登山道があります。登山道のある東山には残雪の上を歩き登ったことがありますが、道のないでっかい山容の東山にこちらはまだ足を踏み入れたことがありません。東山森の頂きには、マタギの熊狩りやノウサギ狩りでも向かったことがないのです。おそらく村の山々のうちでも「人がほとんど入らない山」の筆頭格にあげられるのがこのどっしりした方の「東山森」です。

そんなこともあって、「いつか、仙北街道・柏峠方面から雪上の東山森登山を」と思っていますが、まだ考えだけにとどまっています。村の山でありながら、なかなか足を向けることができない、そんな所もわが村にはあるのです。

村のいずれの名峰も県境深山に位置しますから、里山の雪解けがはじまるこれからが頂の白さが映えるとき。春山の雪上歩きや山岳スキーなどでこれらの嶺をめざす人々は、「早く4月が来ないかなァ」と、積雪が堅く締まる季節を心待ちにしているでしょう。実は、私もそういう者のうちの一人です。

(写真は、最初が焼石連峰の三界山や南本内岳、南の森など。次が2つの東山峰)