ナラ枯れ被害木へキノコ

村内の里山、そして深山のミズナラへと、ここ10年ほどの間に被害がいっきに拡大したナラ枯れ病。病におかされ無残な姿を見せるナラ林は、村内をふくむ県内の広範な地域に見られます。被害が甚大な山では、それは、さながら廃れた森ともいえる有様です。

「新雪にクマの足跡があるかな?」と訪れた近くの里山。わが集落でも、病で枯れ死したナラの幹の立ち枯れ状態が年々増え続けています。枯れた幹にはキノコのムキタケやナメコの菌がいち早く取り付き、木質の分解をうながしているようです。

2010年代から2020年代は、村や県内でナラ枯れ病が最も勢いを増した時と歴史に記されるかもしれませんが、そのナラ枯れ木に大量のナメコやムキタケが発生した姿も、生物界、キノコの世界のめずらしい記録として刻まれることになりそうです。

こうした現象は県内にとどまらず他県でも見られるようです。一昨年にお会いした仙台キノコ同好会会員みなさんからの情報では、宮城でも「ナラ枯れ木にナメコ大量発生」はあたりまえの現象になっているようです。

キノコそのものをいただけることはありがたいのですが、それがナラ枯れによるものと思うと、喜びは半減。なにしろ病枯れ木に生えるキノコは採れてもわずか数年で終わりでしょう。一方で、ナラの菌根とともに共生し長年楽しませてもらえるホンシメジやシシタケ、シモフリシメジ、それにホウキタケなど、いわゆる高級でおいしい「土キノコ」は、ナラの木の死滅でほとんど発生できなくなると思われるからです。

ナラ枯れ病は、深刻な森林荒廃を起こすとともに、キノコの世界にも大きな影響を与えます。まだ寿命に到達しない生物が、病というあたりまえでない状態で滅んでゆくのですから、目に見えないところでは、もっと広く生態系への負の影響があるものと思われます。

ナラ枯れ病は、伝染性の萎凋病といわれますが、なぜこの病菌は数多ある樹種のなかでナラやカシ類などだけに取り付くのか不思議なものです。ナラ類は病気に着かれやすい生物としての何か大きな欠陥、弱さがあるのでしょうか。

雨と晴天で里の雪が消え、ナラ枯れ木にキノコということもあり、もう終わりだろうとあきらめていたキノコ便りをまた載せることになりました。最後の3枚のキノコ写真は、ナラ枯れ病とは関係なく生えたジェンコシナダゲ(オツネンタケモドキ)とヤマドリモダシ(クリタケ)です。

オツネンタケモドキ(越年茸擬)は、その名のように年をまたいで雪解けの春になっても丈夫で生きているキノコという意味もあるのでしょう。また、集落の方言ジェンコシナダケの「ジェンコ」は「お金」という意味で、傘の形か色のどこかがお金に似ているから昔人はそんな名をつけたのでしょうか?

シナは「しない(撓い、堅い)」という意味です。かみ切れないほどの撓さがあるキノコという意味でもあります。私は、アシグロタケと同じように時には乾燥もして味噌汁や煮物、うどんのつゆなど出汁用によく使います。クリタケも甘みのある出汁があり、さくっさくっと噛み応えのあるおいしいキノコ。やはり味噌汁やおでんで味わいます。