田んぼそばで白骨化したクマ

我が家の田んぼそばの台地に白骨化したクマの骸があります。
自然界に生きるクマは「死んだ体を人に見せない」とよく言われ、村の狩人たちの間でも「山野で、クマの亡骸を見たことは一度もない」というのがいわば通説。もちろんこの私もそういう場面は一度も目にしておりません。カモシカなら時々死体を目にしますが。
それが、山野で、しかも人家から200㍍ほどしか離れない田んぼそばの台地にあったのですから、私にとっては驚きです。これはそうは見られない姿だからです。
我が家の田んぼがある通称「川通野」(カドリノ)の台地。そこは古代からの路が通っていて旧村道(赤道)として永く人々が歩いたところです。津軽藩のお殿様が事情あって南部領を通らず一度だけ参勤交代で秋田領を通ったというのもこの路でしょう。田んぼのある箇所から少し南に進めば旧伊達領の奥州市につながる古道「手倉越」(てぐらごえ・仙北街道)があるからです。
クマの白骨があったのはその田んぼからわずか50㍍ほどの旧村道脇、比較的きれいな草むらの中です。ほぼ直下には国道342号が通ります。クマの死体は完全に白骨化していて肉片はもちろんゼロ。毛皮はまだ一部が黒ずみながらも残っています。肉食動物やカラス、虫などが腐敗した体をすってんてんにすべて食べ尽くしたのでしょう。
骨は体全体がほぼそのまま残されています。昨年にはなかった骸ですから、今年の春から夏初めの間にここで亡くなったのでしょう。死因はもちろん不明です。クマが死に至るような交通事故ならおそらく車も破損し通報があるはずですが、近くでそんなことがあったという情報には接しておりません。
そういえば夏に妻と二人で畑作業をしていた時に、クマの遺体があった場所の上空にカラスが集まり、そばの樹木に群がり留まっていました。「おかしいなあ?なんであそこにカラスがあんなに多く?」とそのときは思いました。おそらくその時はまだクマの肉片が残っていて、それでカラスたちが集まり騒いでいたのだと思います。100羽をこえる群れでしたが、大きなクマの遺体は、かれら多くのカラスやトビ、キツネ、テン、イタチなどの糧になり、夏の間に完全に白骨化したというわけです。
自然界で命を果てたクマの白骨体がそのまんまで見られるのは極めてめずらしいこと。それもあり、体長を計ってみました。頭の長さは約30㌢ほど。頭から座骨までの長さは約130㌢ほどで、立派な大人のクマです。
研究など何かの参考に必要であれば、骨はまだそのままの状態でありますから、関係機関などで関心のある方は役場などにお問い合わせを。