山がふくらみ春黄葉に

きのうの雨でブナもいっきに緑を増し、芽吹きの遅い樹種のナラなども次々と新しい葉っぱをひらき始めました。村人は木々の萌えを「葉がほげる」といいます。この季節の雨を「菜種梅雨」というそうですが、その雨が芽吹きをいっきにうながしますので、これはさながら「葉ほげ雨」です。

それにイタヤカエデの黄色の花も加わり、里山は緑、薄い赤、黄と、色とりどりの若葉や花でほんわりとふくらんできました。いよいよ春の里山がもっとも美しい景色を見せる春紅・黄葉のはじまりです。

春黄葉の季節に入れば里山は山菜シーズン真っ盛り。人々は、集落の東西南北、あちこちの沢へ、雪崩跡の斜面へと何十年も通い慣れたそれぞれの採り場へ向かいます。

ところで、わが集落の高橋草松さんもそのうちのお一人。高橋さんは私にとって山菜やきのこ採りの大先輩。

自営業だった高橋さん、家業はとっくに息子さんへ引き渡されていて、引退後は春は山菜、秋はキノコ採りと、山歩きで運動と趣味を兼ねた時間を過ごされております。

プロ顔負けというほど山菜やキノコの発生場所に詳しい高橋さん。山の表情をみれば山菜の様子がよくわかるのでしょう、先日、ウドなどをリュックいっぱい背にして山から下りてきた際、笑顔で山の様子を語ってくれました。こうしてご紹介することをお断りして、その楽しそうな様子を撮らせていただきました。

山菜採りでは雪崩後の急斜面を歩き、秋のミャゴ(マイタケ)採りでも、急峻な尾根筋や斜面を背にキノコをいっぱいにして上がり下がりする高橋さん。85歳でのその強健さ、脚力の強さには山歩きには慣れているこちらもおどろくばかりです。おそらく、これほどの高齢でこれほどお元気に急峻な山をほぼ連日歩ける方は、長寿社会となった昨今でもそう多くはおられないでしょう。

85歳といえば私なら今から15年後のこと。たとえばそれまでの歳になったとしても、高橋さんのような山歩きはこちらにはムリと思います。大先輩の歩きにはそれだけの凄みがあるのです。健康長寿とはこういうことをいうのですね。