いつもの年なら9月半ばに真っ盛りをむかえるアガキノゴ(サクラシメジ)が、今頃になってもまだ採れ時です。あんまり顔出しが遅かったので「今年は不作」と決めつけていましたが、それは早合点。翻って「真っ盛り時期が20日近く遅れた。こんな年はめずらしい」という記憶に残る年となりそうです。
いつもの年ならサクラシメジ採りの頃によく出会えるフジミャゴ(センボンシメジ・シャカシメジ)も、サクラシメジとまったく同じように出遅れて発生。食べるにはぎりぎりセーフの状態で見られました。これがもう一週間前の時期だったら、センボンの名にふさわしく若く美しい株だったでしょう。
同じような里山のナラ林めぐりで楽しみなのは、クリカラモダシ(クリフウセンタケ)との出会いです。
こちらもやはり遅れての顔出しですが、発生量は平年をはるかに上回ります。「ゴンドかぶり」あるいは「木の葉かぶり」と言われるように、落ち葉を傘に載せたまま生長する「愉快なキノコ」です。ひと株に集まるキノコの数が多く、条件がよければ茎が地上よりも地下に深く伸びていて、かつ傘に少々の粘性もあるので木の葉が落ちにくいのでしょう。菌列をつくる群生に出会えたら一箇所で大量に採取できます。ヤブの少ない平坦な地上に多く見られますから、家族連れでの採取が楽しめるキノコです。でも、やや似たような毒キノコも結構あることで警戒されてか、食べられるキノコとしての認知度は低いようです。
このクリフウセンタケ、味も優れ、特有のサクッサクッの歯ごたえも抜群。発生量も比較的多いことから、私は里山のキノコ番付一覧として、オオヒメジ(ホンシメジ)、シシタゲ(コウタケ)に次ぐ格付けをしています。
これらのキノコを採りながらアカマツの樹下に近づきます。すると次第に増えてくるのがアミッコ(アミタケ)。アカマツの下でごく簡単に大量に採れ、熱を加えると紫色になって味もなかなかですから人気の高いキノコです。
最後はホウキタケの仲間です。ホウキタケそのものだと思いますがよくはわかりません。9月末から10月にかけて毎年おいしくいただいているキノコです。里山も深山も、出遅れたキノコたちがいっせいに盛りの顔を見せ、高原の紅葉と同じように林内もようやくにぎやか、華やかな彩りとなっています。
▼最終の写真は、私のようにキノコ採り趣味の方が採ってきたホウキタケの仲間です。まことに肉厚立派な株で、おそらくホウキタケと思います。しかし、ホウキタケはいったん地面から離してしまうと山に発生している時の色を保てずに変色してしまう種があります。黄色いホウキタケにはそういう変色の激しい仲間があり、現場の姿でないとなかなか鑑定のむずかしい種なのです。これなど、食味最高級にはいるホウキタケの仲間でしょう。