初ものマイタケ、通に人気のエゾハリタケ

先週、稲刈りを終えた後、ブナとミズナラの森へ入りました。
山入りでめざしたのはミャゴ(マイタケ)。ハギミ(キノコ採りプロ)の方々や、よくキノコ採りに入る人たちから寄せられるのは「今年は、マイタケの出が遅い」という声。

秋キノコのはしりともいえるアガキノゴ(サクラシメジ)が今年は極端な不作で終わりそうですから、マイタケもそうなるのか。「まずは、確かめてみよう」と、今季二度目の下見がてら、長年通い慣れたミズナラ大木にむかいました。

過去に採取したことのある20本ほどのミズナラをめぐることおよそ2時間半、いくら歩いてもマイタケの姿はなかなか見えず。やっと1本の大木で、まだ採るにはちょっぴりもったいない幼菌の株が小さく3塊ほど見られました。遠くてそんなに簡単に入れる所でないので、今シーズン初の山神様からの高級贈り物を惜しみながらもいただいてきました。この塊が大きくなったら1株で3㌔以上にはなるだろう、いいかたちのクロフミャゴ(黒い色をした上質のマイタケ)です。

ほんの香り程度ですが、彼岸の仏様にも秋の山の幸、初モノを供えることができました。
今年のマイタケはやや不作のままで終わるのか、それとも遅れていっせいに出てくれるのか、今月いっぱい経てばその結果はわかるでしょう。

向かう途中の沢では、ブナの倒木にツギワゲ(月ワゲ・ウスヒラタケ)がいっぱい。ほんのわずかのカノガ(ブナハリタケ)も目に入りました。尾根筋のブナの幹では、見事な形に生長しきったノギウヂ(エゾハリタケ)との出会いも。エゾハリタケの多くはブナやイタヤカエデの幹の高所に多く発生するため、運良く発見しても採取をあきらめたり、採取するにしても手間取り、危険を冒しての木登り採取ということも時々あるキノコ。

それが、今回巡り会ったエゾハリタケはめずらしく人の背丈よりずっと低い箇所で幹に張りついています。倒木ならよくあることですが、こんなに簡単に形の優れたこのキノコを手にしたのは久々のこと。エゾハリタケは、県南の食通の間ではマイタケと同等かそれより上のランクがつけられる稀少価値のキノコ。我が家では、早速塩漬けにして、1年後には味噌に漬け替え、さらにそれから1年後に飴色に漬かった珍味を楽しみます。この日のエゾハリタケは形も最高級、たった1個で6㌔グラム。山の神様からのほんとにめずらしい豊かなご褒美で、どっしりと重い塊を背にしたら、特有の香りが背から漂い続けました。

山入の谷には大小の様々な滝がたくさんの沢筋にあります。沢にも滝のそばにもダイモンジソウやチョウジギクが花盛りで、所々にはリンドウも見られます。滝をながめては一休み。花を眺めては一休み。ブナの林をながめては一休み。見事なキノコをながめては一休み。熟れ盛りのアケビを口にしては一休み。それに原生の森が生み出すおいしい酸素を体にいっぱい取り込みました。私の、心癒やしの秋の山入りはこれからひと月ほど続きます。