美の衣をまとい柿の実に通うテン(その一)

いつものように外の景色を眺めながら朝食をとっていた9日。時刻は7時30分を少し過ぎた頃。風邪気味だったので、この日は普段より1時間遅れの朝食です。

その食後のおきまりでコーヒーをカップの半分ほどまで飲んだ時です。お天気が「雨から雪に変わったな」と窓外を眺めるこちらの眼中に、左から右に駆け抜ける黄色い生きものの姿が瞬間的に飛び込んできました。

瞬時に「あっ、テンだ」と判断。食後の後片付けをしていた妻が立つ場所からは窓をはさんで2㍍ほどの外をテンは堂々と走っていったのです。「いつか、こういう時がくる」と待っていたのはこちら。準備していたカメラを急いでかかえ家の外にとびだしました。

まぎれもなく、その黄色い生きものの姿はテン。自宅そばの柿の実を食べに来たらしい。普段なら夜の行動なのに、この日はどういう風の吹き回しか気分の移りようかわかりませんが、日中に堂々のお出ましです。

キツネやテンなど彼らの食をとる時間は主に夜が多いのですが、ご承知のように時々日中も見かけられます。テンは木の実などもよく食べますし、テンもキツネも日中にノウサギやヤマドリなどを捕らえることがありますから、昼の行動もめずらしくはないのです。

積雪を見るようになると、いつの年も我が家の軒下にはテンやキツネ、イタチの足跡がいっぱい。彼らは夏のうちから池の鯉も狙っていて、とくにイタチには我が家の多くの鯉が水揚げされてしまいました。

さて、今回姿をあらわしたのは、ここらあたりを毎夜徘徊し雪上に足跡をつけていたテンと見られます。このテンは、推測したようにやはり柿の木の下にまず近寄りました。そこで雪の中に落ちた実を食べる仕草を少しして、そんなに間をおかずにまだ実のある柿の木にいっきに登りました。樹上の軽い身のこなし、すばやい動きは猿と同じ。細い枝を渡るうごきでは体が軽いだけに敏捷さは猿を上回ります。