「いずくら」の崖紅葉とブナの森の幸

ブナの森深山、渓谷断崖の紅葉美としては村内一、あるいは県南一、県内屈指といってもよいでしょう、合居川渓谷「いずくら」と天正の滝周囲の崖紅葉が真っ盛りです。

柱状節理の断崖で、谷川から尾根までの高さが500㍍ほどあるこの切り立つ崖「いずくら」は、岩肌に立つヒメマツ(キタゴヨウ松)の緑と落葉広葉樹の錦絵のような赤と黄、尾根筋のブナやイタヤカエデ、それにしぶきを見せて下る渓流が合わさり、まさに息をのむような渓谷の紅黄葉美をうみ出しています。

こんなすばらしい景色が道路からながめられるとはなんともうれしいこと。みなさん、ホテルブランや栗駒山荘、村の温泉をたのしみながら、是非、国道397号から入る合居川渓谷、天正の滝方面に車を進めてみてください。

「こんなに近くに、こんなすばらしい渓谷の紅葉美があったのか!」と、はじめての方ならきっとそう思うでしょう。天正の滝の展望台からながめる紅葉もお見事、滝の所のような案内看板はありませんが、滝のすぐ手前「いずくら」の崖を道路からながめる紅葉はさらにお見事です。こういう景観は、車で行ける方々だけで楽しむのはもったいなし。みんなの財産「宝の景観」は、新聞やテレビなどでもご紹介してもらいたいものですね。

▼錦秋の谷は、宝の景色に染まるとともに「山の幸」キノコも育てます。

この時期のブナの森深山で私がめざすのはナメラコ(ナメコ)。出の早いナメコは今が盛りで、晩生は小豆大の粒々がようやく見え始めています。

ナメコのそばには、美味なブナシメジやムギダゲ(ムキタケ)、ヂヂナメラコ(チャナメツムタケ)も顔を出しています。眺めても(とくに群生)食べても、人気の高さではキノコ界のトップクラスにあげられるというナメコ。今年は、久しぶりで「ええな、ええな(すばらしい、すばらしい)」とつぶやきながらシャッターを押せるような群生に出会えました。

帰路の尾根では、倒れた枯れ木の根元にナラタケ(モッコラモダシ)がいっぱい。これも、なんとか写真に収められるほどに傘の黄色が保たれていました。採る時には、このモッコラモダシ特有のポキン、ポキンと柄(茎)の折れる音が響きました。

谷の最上流部ではブナも落葉が始まり、中流部は高木から低木まですべてが色づき、全山が錦のじゅうたんに染め上げられています。

今年は、ブナの実がゼロ。ミズナラにもドングリがほとんど見えなかったので、地面にはいつもの年のような木の実がなくさみしい限りです。われわれは「さみしい」程度で済みますが、ドングリをこの季節の主食とするクマなど生きものたちにとっては「死活問題」でしょう。母グマの子宮に着床せず夏の間子宮内を漂っている受精卵も、木の実で母親が栄養がとれなければ着床できないかもしれません。とりわけ、越冬用の脂肪をたくわえるためのドングリがめずらしく凶作となったこの秋、冬眠前のクマたちがこれからどこに向かうのか、気になる10月末です。

▼きのうは、先に届いていた医療、介護関連の二つの陳情書について、提出された団体代表が議会に見えられ内容の説明をしていただきました。総務教育民生常任委員長とともに、ていねいな説明をお聞きしました。きのうは、「雨の来る前に」と、来年春にそなえ、畦を削る箇所などたんぼ周囲への除草剤散布も済ませました。

根雪の前に、もう、来春のことを頭においた作業です。農家をはじめ雪国のくらしでは、まだまだ根雪の前にしておかなければならないことがいっぱいあります。雪が頭からはなれない、雪が軸になる。私たちの一年のくらしは冬を柱にして回っているようなもの。文字通り、ここは「雪国」というわけです。