合居川渓谷の入り口「いずくら」の崖紅葉もいよいよ見頃始まりとなりました。そうなると里山の色づきもいっきに進み、村はいずこも錦秋の景色に彩られつつあります。
この頃になると里山のキノコの世界もいよいよにぎやかになります。ただ、今年の雨不足は、多くのキノコたちにとって発生環境がよくなかったらしく、食毒含めて林の中はいつもの年よりキノコの数も種類もずいぶん少なめです。そんなちょっぴりさみしい里山で、この5日間ほどの間に出会えたキノコたちを2回にわけてご紹介です。
最初は、よくホンシメジやウラベニホテイシメジなど、食べられるシメジと間違えられる毒キノコの代表格クサウラベニタケです。
次は正真正銘のホンシメジ。今年は、発生量が極端に少なく、出ている株も形がいびつで、本来のいかにもシメジらしい見事な姿とは遠くかけ離れた形です。
次は、なんという種なのか鑑定のむずかしいキノコです。柄(茎)は充実していますから毒種のクサウラベニタケではなし。しかし、ホンシメジにしては色と形がどうもおかしい、でも、毒種のイッポンシメジとは形も大きさも少し違います。発生条件によって同じ種のキノコでも大きさや色の違うことはよくあり、大小や色だけで食毒見分けのつかないこともあります。結局、このキノコは「危ない」ということでそのままにしてきました。
ホンシメジ、クサウラベニタケ、ウラベニホテイシメジ、イッポンシメジの食毒4種は、よく間違われるキノコたちです。間違いやすいのは、ホンシメジと思いイッポンシメジやクサウラベニタケに手を出すことが一つ。もう一つは、ウラベニホテイシメジと思いイッポンシメジに手を出すこと。だから、この種の仲間でとくに中毒事故が多いのでしょう。
次のキノコも、私には鑑定のむずかしい仲間です。これまでは、ブナ林に列をつくって発生するこのキノコをアケボノサクラシメジとして紹介してきました。れっきとした食ベられるキノコですが、これまで何カ所もの違ったブナ林から採ってきて調理してもらったものの、いやな臭いがしてとても食べられた代物ではありません。
多くのキノコ紹介がある図鑑では、アケボノサクラシメジと並べて、このキノコと同じ仲間として、姿形がとてもよく似ているキノコも載せています。そのキノコには「フキサクラシメジ」という名がついています。やはり「煮干しに似た臭いが」などと記されていて、写真のキノコと特徴が似ています。ただしこのキノコの記述では「針葉樹下に発生」と発生地を限定しています。私が写真に収めてあるキノコはみなブナ林で出会うものばかりです。いやな臭いの特徴は同じですが発生地が違うのです。
図鑑の解説とちがうことが自然の現場では時にあること。キノコや植物では、図鑑の解説と現場を比べると「この図鑑の解説は、おかしい?」ということが時々あります。ブナ林に発生するが、臭いがきつくてとても食べられない、さて、これはアケボノサクラシメジか、それともフキサクラシメジか、私にはわかりません。いかにもおいしい形をしていますが、何度も採って、時には塩蔵までして調理してみても、臭いがひどくとても口に入れる気にはなれないキノコです。私にとってキノコの世界は、ナゾの深い不思議だらけです。
次はムラサキアブラシメジかムラサキアブラシメジモドキのどちらかでしょう。おいしく食べられるキノコのようですが、それほど多くは見えないので私は口に入れたことはありません。
次は発生量も多く採取も簡単で多くの方が好んで食べるナラタケ。私の集落では同じナラタケでも、里山でナラ類の枯れた根元に多く発生するナラタケはモッコラモダシと呼び、湿気の多い場所や倒木に大発生するナラタケはサモダシと呼んではっきりと区別します。発生条件も、形も、味も、色も、二つは明らかに違うからです。モッコラモダシは湿地にはほとんど見られず、やや風通しの良い林内のとりわけ枯れ木や半枯れ木の根元に多く出ます。歯触りはいいですがサモダシよりも粘りが薄く味もサモダシよりやや落ちます。ただ、株が大きくて柄も長くきれいで、傘の黄色がひときわ美しく、採る、撮るにはとてもうれしいキノコです。22日にはもう盛りを過ぎ、ほとんどは腐って崩れた株が多くなっていました。
次が同じナラタケの仲間で、これがサモダシです。写真のサモダシは、人里の湿地に倒れた枯れ木に発生していた晩生もの。今年はナラタケの仲間の発生がいつもの年よりかなり少ないようで、やはり極端に発生が少なかったシメジやシシタケなどとともに、雨不足の今年を象徴しています。
次は晩生のハナイグチです。ハナイグチは採取期間の比較的長いキノコで、たいていのキノコがそうであるように晩生になると逸品で、形も充実してすぐれ、味も濃くなります。
10月も下旬となった我が家の食卓には、食用菊、カボチャ、おいしさ秀逸の最後のトマト、そして秋ナスなどとともに多くのキノコたちが並び、私の食欲をそそり続けます。
毒で始まった今日のキノコ紹介なので、終わりも毒のスギヒラタケで。以前は、針葉樹からたくさん採れるおいし食キノコの代表として多くの人々に愛されてきたスギヒラタケ。特定の病気に罹患の方に限っての中毒死などが発生してからは、食茸ではあっても毒の仲間に加えられるキノコとなり、私も時には食べますがほとんど敬遠しています。「健康なので、今も同じくおいしく食べている」という方もいるようですが、おかしなもので、いったん毒扱いされると、食べてもおいしさが今イチなものです。
▼21日は県町村議会議長会の正副会長会議と理事会へ。会の30年度会計決算と補正予算などを審議。来月に開かれる知事と市町村議会議長との行政懇談会における要望内容や当面する活動などを協議しました。