珍種のチョレイマイタケ

キノコの仲間のうちでもめったにお目にかかれないチョレイマイタケを、このあいだ初めて口にする機会がありました。つまり試食です。

去る10日、村内の山にわらび採りに入ったある村外の名前もわからない方が「こんなキノコがあった」と直売所に持ち込みそのまま置いていったそうです。この話題のはじまりはそこから。

ご本人も、直売所のどなたもそのキノコは、見たことも、もちろん食べたこともないキノコですから、その場面はとりあえず「ほほう、めずらしいキノコもあるもんだ」程度で終わったのでしょう。

その後、こちらなら「そのキノコのことがもしかしたらわかるだろうか?」ということででしょうか、我が家にそのキノコは持ち込まれました。

早速、こちらは蔵書のあらゆる図鑑やきのこガイドブックを開いてそのキノコとにらめっこ。しばらくの時間を要して、発生時期、発生環境、キノコの色かたち、姿から「これは、チョレイマイタケだろう?」と99㌫ほどの確かさで素人判断をしました。

判断だけでは物足りず、「この機会に食べてみれば、食べられるか、毒か、不食かわかるはず」と、こういうことではいつもためらいがちの妻に、無理矢理たのんでお吸い物をつくってもらい試食を決行してみました。

キノコの世界は奥深いですから、研究者でもない限り「食べたことのないキノコは、食べない」が一般人の鉄則。そういうこともあって、いかにも食べられそうですが、まずは用心にと、ほんの一箸を口にしましたが、それほど特徴のある味覚はなく、だいじょうぶそうだったので、とりあえず少々をいただきその日はそこで止めに。

翌日になって、内臓にも頭にもなんの変調もなく「これは、まちがいなくチョレイマイタケ」と、こんどは安心の気持ちでゆっくりといただきました。ただ、ガイド本に記されているほどおいしいキノコではなく、やや甘みはあるもののそれほど出汁もなく、マイタケに比べれば味は数段格下。味覚への反応というものは人によってあまりにも多様ですからいちがいに決めつけはできませんが、私にとってはごくありふれた味のキノコでした。漢方薬としては珍重されるきのこのようです。

思わぬチョレイマイタケとの出会い。こちらにとって勉強になったことがいちばんうれしいことで、村内では6月10日には成長したかたちのそれが発生しているということを知りました。採取されたどこかのどなたさんかは、「まだ、ほかにもあった」といわれていたそうですから、採ってきて食べてみてほしいものです。「毒見」をした本人が証明します。食べられるキノコであることはまちがいありません。